先祖返りの町作り
第220話 首都ガイン
凱旋パレードを終えた私は、
懐かしの我が家である領主館に到着していた。
そこでユキムラから、
引っ越しの準備を進めている事を知らされた。
なんでも、領主館の近くにある、
一等地の雑居ビルを買い取っており、
そこを臨時の大統領府とするらしい。
そして、いずれはその臨時大統領府と、
現在の領主館の機能を交換する予定だとか。
つまり、現在の領主館がいずれは大統領府となり、
臨時大統領府がいずれは県庁になる予定だ。
そのため、ガイン家の私室を、
そのままにしておく訳にもいかず、
近くの一軒家を買い取ったそうだ。
少しずつ引っ越しを進める予定なので、
私にも荷物をまとめ始めて欲しいと言われた。
なお、後日にその新しい家を見に行ったが、
高級住宅街にある広めの屋敷だった。
「家族だけで住むのですから、
もう少し小さな家でもよかったのでは?」
私がユキムラにそう感想を述べると、
この家にした理由を教えてくれた。
「あまり小さい家にしてしまうと、
現在のメイドさん達を、
解雇しないといけなくなりますから」
私はその細やかで優しい配慮に、
感心しきりであった。
久々の自室で英気を養った私は、
早速翌日から精力的に執務をこなす事になる。
最初に行ったのは、
臨時大統領府の閣僚の決定である。
一人目の大臣に任命したのは、
ネリアの7代目の子孫で、
モントさんという青年だ。
帳簿仕事をしていた、
レオンさんの末裔にふさわしく、
非常に数字に強いため、
そのまま財務大臣をお願いしたのだ。
なお、モントさんは、
ネリアとローズさんの子孫である事を、
強調するような、
見事な赤毛の持ち主でもある。
二人目の大臣に任命したのは、
これまた私の子孫であった。
メイの7代目の子孫であり、
ティータの4代目の子孫でもある、
バルトさんという青年だ。
彼はゴランさんの子孫である事を証明し、
とても勉強熱心で、
各種の法律について非常に深い知識を誇っていた。
その知識量を見込んで、
法務大臣をお願いしたのだ。
まず最初にしなければならないのが、
各種の政策の根拠となる法律の整備と、
それを執行するための予算の編成である。
そのため、とりあえずの閣僚として任命したのは、
この二人だけだ。
「私の子孫だけが閣僚になっていますが、
えこひいきだと批判されませんかね?」
私はそんな懸念を表明していたが、
全くの杞憂であると説明されていた。
二人とも高級官僚として、
確かな実績を残しているため、
誰からも不満はでないだろうと、
指摘されていたのだ。
二人を補佐するスタッフの任命も終わった後に、
私は臨時大統領として最初の仕事を行った。
公共放送網を使い、
ガイン自由都市に遷都する事を、
市民達に直接説明したのだ。
この知らせは歓喜をもって市民達に受け入れられ、
ガイン自由都市は、
その正式名称を首都ガインへと改めた。
しかし市民達は、自分達の首都を愛着を込めて、
ガイン自由都市と、
ずっと呼び続ける事になるのであった。
ちなみに、これまでの首都であった王都は、
名称を古都リスティンに改めている。