先祖返りの町作り
第221話 地方公務員
とりあえずの体制を整えた私は、
次に地方の官僚組織の整備に着手した。
本当の意味での、
民主主義国家を作り上げるためには、
今のような有力者による合議制では、
かなり都合が悪い。
それでは、
一部の学のあるものだけが政治参加する事になり、
それらの人々が、
やがて貴族化する可能性を否定できないからだ。
そのため、早急にきちんとした公務員制度を作り、
地方行政を担ってもらわないと困る。
もちろん、各地に初等学校も設置し、
広く学問を奨励するつもりではあるが、
今はそこまで手が回らない。
(あせっても仕方がありません。
一歩ずつでも着実に進めてゆきましょう)
任命したばかりの閣僚を集め、
第一回の閣僚会議を招集した私は、
そこですぐに深刻な問題に気付く。
「圧倒的に人材が足りませんね……」
現状でも、ガイン自由都市の官僚組織から、
人材を引き抜きすぎている。
これ以上は、都市運営に支障が出るレベルだ。
そのため、
この上更に地方に回せる人材を引き抜く事は、
断じて認められない。
さてどうするかと悩んでいると、
法務大臣のバルトさんから、妙案が提示される。
「広く一般募集すればよろしいのでは?
とりあえず必要なのは、
税金の管理やコセキ調査の下準備でしょう?
この都市のものであれば、
基礎的な学力に不足はありません。
それに、
地方からこの都市へと逃げてきたものも、
多いはずです。
故郷での仕事を用意すると言えば、
応募するものはそれなりにいるはずです」
私はその意見に納得し、
早速募集要項等の細部の詰めにかかった。
この手法を応用すれば、
現在は棚上げにしている初等学校の先生も、
問題なく募集できるはずだ。
ただ、何の下準備もなしに、
いきなり送り込む訳にもいかないため、
ある程度の研修期間を設ける事も、
合わせて決定した。
これは少し先の話になる。
ここで採用された地方公務員達の多くが、
各地で奮起して活躍してくれる事になる。
皆故郷へ錦を飾る心意気なのだろう。
これからの故郷をより良くしていこうとの、
気概に溢れたものたちばかりだったのだ。
そのため、
彼らは後に設置された県庁の職員の中でも、
重要なポストを占めるようになり、
地方の官僚組織を作り上げていく原動力に、
なるのであった。