先祖返りの町作り
第183話 真面目な激甘空間
そそくさとクリスさんの元を訪れた私は、
早速彼女に魔力の充填のお願いを始めた。
「ヒデオ様のお願いでしたら、
里の皆は誰も異を唱えないと思いますよ?」
と、あっさりと了承してくれた。
「では、対価は主に鉄製品で良いですか?
もちろん、それ以外も、
希望があれば取り寄せるようにさせますので」
「別に対価など用意していただかなくても、
かまいませんよ?」
私はそれを良くないことだと、指摘する。
「いえ。それはいけません。
里の皆は善良ですが、
ヒム族は欲深いですからね。
対価もいただかずに仕事をしてしまうと、
あっという間に付け込まれますよ?」
クリスさんは、そんなものですかと、
納得してくれた模様だ。
ちなみに、ごく真面目な会話をしているが、
この間ずっと、
私達はぴったりとくっついている。
クリスさんの頭は、
ずっと私の肩に置かれたままだ。
島の里の皆は、
またいつものようにイチャコラしていると、
思っているようだ。
そのため皆一様に、仕方のない人たちですねと、
生暖かく見守ってくれている。
「そういえば、ヒデオ様。
以前にプレゼントしていただいた、
魔力ジドウシャはありがとうございました」
クリスさんは既に運転免許を取得しており、
その合格祝いに、
私は一般的な魔力ジドウシャを送っていた。
「気に入ってもらえたのであれば、
私もうれしいですよ?」
私がそう言うと、
クリスさんはモジモジとしながら、
おねだりを開始する。
「あの……。
あれはとても高価なものだとは、
理解しているのです。
で、ですが。
私は、その、もっとスピードを出したいと、
いいますか……」
クリスさんは、
しばらく視線をさまよわせていたが、
意を決したように私におねだりする。
「できれば、ヒデオ様と同じ魔力ジドウシャが、
私も欲しいのです!」
両手を握りこぶしの形にして、
ふんすーっと、鼻息も荒く宣言している。
「か……」
「か?」
「かわいい……」
その仕草がとても愛らしくて、
私は思わずそうつぶやいてしまっていた。
そうすると、彼女は頬を染めて、
うつむいてしまった。
何だかもういろいろと我慢できなくなって、
思わず彼女を抱きしめる。
「ヒ、ヒデオ様?」
「分かりました。そのようなかわいらしい姿で、
おねだりされてしまっては、
私に拒否する事など不可能です」
私はそう宣言し、
次回の訪問時に特別仕様の魔力ジドウシャを、
プレゼントした。
ただ、これには私にとっての利点もあった。
クリスさんは、以前より簡単に、
ガイン自由都市まで旅行できるようになったため、
これまで以上の頻度で、
私を訪ねて来てくれるようになったのであった。