先祖返りの町作り
第57話 孫と里帰り
そうやって、
アレスさんと一緒に途中の村で行商を行い、
数日が経過し、今、
私の里にエストと一緒に到着している。
「これが、森の隠れ里……」
エストが感動の声を上げている。
そうすると、近くにいた子供が近寄ってくる。
「あ! 祭司様だ!
おかえりなさい、祭司様」
「ただいま。フィアナ。
これ、お土産のクッキーです。
たくさんあるので、いつものように、
子供達皆で分けて食べてください」
私は背嚢から、
クッキーの入った袋を取り出して渡す。
この子は、私が里を出てから生まれた、
まだ20歳くらいの若い子供だ。
この里では、
野生の蜂の巣から取れる蜂蜜も手に入るが、
そうめったに口にできるものでもないため、
私が持ち帰る甘い焼き菓子は、
子供達にとても人気がある。
「おじい様は本当に、
祭司様と呼ばれているのですね」
エストがつぶやく。
その姿を見たフィアナが、私に質問する。
「祭司様、その子、初めて見ますけど、
新しい行商人さんですか?」
「この子は、私の孫のエストです」
エストが続けて挨拶する。
「初めまして、フィアナちゃん。
私がおじい様、いえ、祭司様の孫のエストです。
よろしくね」
それを聞いたフィアナは、
少し驚いたようにしている。
「祭司様、
いつの間に結婚なされていたんですか?
それに、お子さんが生まれていたんですね!
おめでとうございます!」
元気良く祝福の言葉を述べるフィアナに、
私は正解を告げる。
「結婚はしていないのです。
この子は私の養子、と言っても、
分かりませんか。
ええと。
孤児を引き取って、育てたようなものです。
その子の息子です」
なんだか、良く分かっていなさそうなフィアナに、
祭司長の居場所を尋ねる。
「エストを里の皆に紹介するのは、
また後にします。
祭司長様は、今、家ですか?」
「はい。祭司長様は、
ご自分の家にいらっしゃると思います」
それから、私とエストは祭司長の小屋に向けて、
里の中を移動する。
里の皆は、私を見かけると、
「おかえりなさい。祭司様」
と、挨拶してくれる。
その全てに挨拶を返しながら、歩いていると、
エストがあるものに気付き、質問する。
「あ、おじい様。
もしかして、あれが前に話してくださった、
ヒドケイですか?」
「ええ。そうです。
かなり昔に作ったのですが、
今でも大切に使ってくれているようで、
本当にありがたいですね」
移動途中で、挨拶の終わった子供達が、
水魔法を使った、
水遊びをしている様子を見たエストは、
感嘆の声を上げる。
「おじい様に聞いてはいましたが、
森の隠れ里の住人は、全員、魔導士なんですね。
あんなに小さな子供まで、
あそこまで魔法が使えるのを見ると、
なんだか自信を無くしそうです」
私は微笑みながら答える。
「私の里の皆は、優秀ですから。
エストもヒム族としては、
魔法がとても優秀ですから、
あまり比較しないようにしましょう」
「そうします。ところで、おじい様。
シユス村で聞いた、
この里とリスティン王国が、もし戦争したら、
王国が負けるという話も、
本当だと思いますか?」
「里の皆は温厚なので、
まず戦争にはなりませんが、
もし仮にそうなったとしたら、
ガルムの都市くらいなら、
簡単に攻め滅ぼせるでしょうね」