先祖返りの町作り
第26話 最初の仕事
魔道具職人になって、最初にやった仕事は、
魔道具に使われている魔法式の最適化だった。
私が無詠唱魔法の使い手なのは、
親方はとっくに知っており、
「お前は、魔導士様なんだから、
魔法式を理解して、
改良する事ができるはずだよな?」
という親方の指示のもと、
高価な本に書かれている、
魔法式を見せてもらった結果、
里のものよりは改良が進んでいるが、
もう少し最適化できた。
やはりヒム族は進歩的で、技術改良に熱心だ。
ただ、無詠唱魔法が使えるような魔導士は、
簡単に大金が稼げるため、
普通は魔道具師にはならない。
しかし、ごくまれに趣味で魔道具を作る人が、
現れるらしく、
少しずつ改良されて来たようだ。
「親方、魔法式が少しだけ短くなりました」
そう言って魔法式を見せたら、
内容を理解できない親方は、長さだけを見て、
ものすごく驚いていた。
「こんなに短くして、
本当に動くんだろうな?」
親方が試作品を作り、確認した結果、
私の評価がうなぎ上りになった。
私が行った改良は、
魔導士数世代分を、
優に超えるレベルだったらしい。
ほめられ過ぎて、恐縮する。
そして、私は親方の従来の魔道具を、
教えてもらいながら作り、
時々、新しい魔道具の提案をした。
最初に考えたのは、扇風機だった。
モーターの魔道具があるのだから、
それくらいの応用は、簡単だと思ったのだ。
提案してみたら、
「送風の魔道具があるのに、
わざわざ羽を回して、
風を送る意味が分からん」
と言われた。
言われてみれば、盲点だった。
風を起こす魔法があるのだから、
扇風機は意味がない。
電動ポンプも没になった。
「あのな。ヒデオ。
お貴族様は給水の魔道具があるから、
水を汲みに行かないし、
平民では高過ぎて手が出ない。
それを開発するぐらいなら、
給水の魔道具の廉価版を研究しろ」
そう指摘された。