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先祖返りの町作り

第27話 電卓の開発

それからしばらく考えた。

(魔法式と言えば、プログラミング言語。
 プログラミング言語と言えば、コンピューター。
 コンピューターと言えば、計算。
 計算と言えば、電卓)

そんな連想ゲームをしていて、気が付いた。

「『電卓』が作れませんかね?」

思わず、自分の部屋で独り言をつぶやく。

魔法式には、当たり前のように算術演算子がある。

おそらくは、
高度に発達した、古代魔法文明の発明品なので、
対数やべき算等の演算子も、あるのだろうが、
そんなコマンドは、誰も知らない。

伝わっているのは、四則演算子や代入演算子等、
基本的なものだけだ。

それでも四則演算ができるので、
電卓ぐらいなら作れるはずだ。

大学の一般教養で習ったはずの、
マクローリン展開の式を覚えていれば、
三角関数も実現できたが、
残念ながら忘れてしまっている。

関数電卓は無理でも、
一般の電卓ならなんとかなるはずだ。

ボタンが押されたかどうかの魔法式は分かる。
火の魔道具を参考にすれば良い。

火の魔道具は高額商品で、
箱のようなものの上部から、
火球の魔法が出る。
側面に配置されたボタンで、
ある程度の火力調整ができる。

この魔道具は、
比較的多くの魔力を必要とし、
また、ボタンがあるため、
配線のための銀線も多くなり、
とても高額だ。

これらの事から、ボタンを使って入力し、
計算する所まではできる。

最大の問題はディスプレイだ。
魔法式内部で計算はできても、
それを外部に表示する方法がない。

(例えば、円柱に数字を書き並べ、
 回転式で数字を表示するのはどうでしょう?

 回転させるのは、
 モーターの魔道具でできます。

 解析した限りでは、
 研究は必要だと思われますが、
 回転角度を調整する事はできそうです。

 いけますかね?)

そこまで考えて、否定する。

(そもそも、
 モーターの魔道具もそれなりに大型です。

 それを横に並べるだけでも、
 恐ろしくスペースが必要になります。

 それに、
 10種類の信号をモーターで処理するのも、
 大変そうです。没ですね)

別の方法を考える。

(では、大昔のハンドメイドマイコンのように、
 LEDのようなものを光らせれば、
 どうでしょう?)

発光する部品を10個並べ、
光った位置で数字を表現する方法を、
検討する。

モーターで、
10種類の数字を表現するものと比較すると、
ON/OFFだけで制御できるので、
いける気がする。

(ライトのような魔道具は既にあります。

 これでも大きなスペースが必要ですが、
 ごく小さい光で良いので、
 小型化できるかもしれません。

 問題は、メインルーチン内部の情報を、
 どうやって光の魔道具に通信するかですね)

しばらく考えて、
ボタンの魔法式で代用できると、思いついた。

魔道具のボタンは、
魔法式のプレートから少量の魔力を流すようにし、
ボタンで配線が繋がった時に、
出口の部分に向かって魔力が流れ、
戻って来た位置の魔法式で、
魔力が検出できたかどうかが分かる。

ボタンの魔法式だけで、
一つの小型の魔道具のような設計になっている。

そう、形こそ一つのプレートに刻まれた、
一つの魔法式のようだが、
私には分かる。

出力側と入力側、メインの魔法式で、
一つのプレート内部で、
通信するような特殊な構造になっている。

一種のプロセス間通信のようなものだ。
この通信手段を、外部に繋げれば良い。

ボタンの出力の魔法式を、
メインの魔法式に配置し、
銀線を繋ぎ、
入力側をLEDの魔道具にすれば、いける。