先祖返りの町作り(再調整版)
第228話 ダイトウリョウセンキョ
それから3年が過ぎた。
現在は予定通りに、大統領選挙が行われている。
私は、周囲から大統領選挙に出馬するように、何度も何度も繰り返し要請を受けた。しかし、頑として受け入れず、拒否し続けた。
「自分で言うのも口幅ったいですが、この国の建国における私の貢献度は、大き過ぎます。
そのため、どうしても、私にずっと『大統領』をやって欲しいと言う人が、多くなってしまいます。
私は、自分が独裁者となって、せっかく作った『共和』国を壊したくはないのです」
そう説明を続け、固辞し続けた。
どうあっても私を翻意させられないと理解した周囲は、私の直系の子孫であるユキムラに、白羽の矢を立てた。
連日の説得にユキムラがついに折れ、大統領選挙に出馬する事が決まった。
「私のわがままで、ユキムラに迷惑をかけてしまって、本当に申し訳なく思っています」
その話を聞いた私は、即座にユキムラに謝罪していた。
そうすると、ユキムラは笑いながら、気にしなくて良いと言ってくれる。
「それに私は、大おじい様に感謝しているのですよ?」
これからこの国で一番の重責を担うであろう、ユキムラからの予想外の言葉に、私は絶句していた。
「大おじい様は約束通り、ヨシヒロには領主の責任を負わせず、職業選択の自由が得られる国を作ってくださいました。
それだけでも、私は十分にありがたいのです」
私を気遣ってくれる、ユキムラのその姿が眩しくて、私は目をすがめながら、ありがとうとしか言えなかった。
(エルク、ルース。私達の子孫は、これほどまでに心優しい、立派な人物になりましたよ)
私は心の中だけでそっと、今は天にいる親友達に報告していた。