Novels

先祖返りの町作り(再調整版)

第226話 子孫の一番弟子

 この頃、ニーナは32歳になっていた。

 相変わらずの魔道具バカではあるが、好きこそものの上手なれの格言の通り、努力を怠らず、めきめきと腕を上げていった。

 その結果、今では自他ともに認める一番弟子となっていた。

 ニーナの研究テーマは、魔道具のさらなる小型化で、いろいろと新しい加工器具を開発しては、小さな魔法文字を刻む方法を試行錯誤している。

 そんなある日。

 初代のワントから数えて8代目となる、ヒデオ工房の副工房長は59歳になっており、引退を表明した。

 その後継者に指名したのは、なんとニーナであった。

 女性として初の副工房長であるだけでなく、弱冠32歳にして、ヒデオ工房の実質的なトップとなるのは異例の事であった。しかし、ニーナの実力は誰もが認める所であり、誰からも異論はでなかった模様だ。

 そんなニーナは、副工房長に就任後、私と顔を合わせるたびに、

「大おじい様。国造りなんて退屈な作業はさっさと終わらせて、ヒデオ工房の工房長に専念してください。そして、私達と共に、魔道具業界をさらに発展させましょう!」

 と、力説していた。

(まあ、全てが片付いたら、そういう未来も良いかもしれませんね)

 私は、そのように考えた事もある。

(しかし……。やはりその時は、クリスさんとのあの約束を果たしたいですね)

 そのため、いつも曖昧に返事をしていた。

 副工房長になったニーナには、あの粉を含めた全ての秘密を打ち明けた。

 その席で、ニーナが感嘆の声を上げる。

「こ、これが、魔道具業界最大の謎の正体……」

 私の作った金色の粉をじっと見つめ、うっとりとした表情を浮かべるニーナ。私はその様子に若干引き気味になりながら、秘伝の塗料の配合方法や、合金の作成手順等を伝えたのであった。