先祖返りの町作り(再調整版)
第223話 目指すべき国の形
定例の閣僚会議を開いていた時、法務大臣のバルトさんが質問を始めた。
「当面の懸案だった、地方公務員の問題もめどが立ちました。そこで、臨時ダイトウリョウの目指す、最終目標について教えていただけませんか?
そろそろ、そこに向かっての準備を始めたいと思いますので」
私はそれに頷きを返し、これからの共和国のあるべき姿を語る。
「今までの国王や領主は、強大な権力を持っていました。これから正式な『大統領』を選出したとしても、その『大統領』が大き過ぎる権力を持っていると、『市民』に牙をむいた時、誰にも止められなくなります。
これをあらかじめ抑止する方法として、三権分立の考え方を導入します」
ちなみに、三権分立等の用語は、あらかじめこの国の言葉で適当な造語を作っていた。今後の事を考え、あまり日本語の名称を乱用するのもどうかと考えたためである。
「国を動かすための権力は、大きく分けて3つあります。
具体的には、裁判を行うための権力、司法権。
政策を実行するための権力、行政権。
法律を作るための権力、立法権となります。
国王は、これら3つの権力全てを握っていました。しかし、これからは3つの機関それぞれに、これらの権力を独立して持たせ、相互に監視させる事により、権力の暴走を抑止します」
偉大な思想家である、モンテスキューの提唱した三権分立を、この国でも採用する事を説明する。
ここで、財務大臣のモントさんが、質問を開始する。
「なるほど。行政の長はダイトウリョウだと理解しましたが、他の権力を持つのは誰になるのですか?」
「司法は、最高裁判所の長官ですね。立法は、これから説明する国会議員となります」
それからの私は、これらの具体的な内容についての説明を続けた。
裁判については、日本を参考に三審制を採用する。具体的には、地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所をそれぞれ設置する。
そして、法整備がある程度完了した時点で司法試験を実施し、成績の上位者から順番に、より高位の裁判官として採用する。
国会については、アメリカの制度を参考にして、上院と下院の二院制とする。個人的には、総理大臣の首を簡単に挿げ替える事の出来る、議院内閣制も優れた制度であると考えている。
しかし、まだまだ民主主義が未成熟なこの国では、あまり複雑な制度は無理だろうと判断し、より分かりやすい大統領制を採用する事とした。
下院は議席を人口配分し、上院は地域代表とみなして、各地方で同数の議員を選出する事とした。
そして、上院議員の選挙に合わせ、最高裁判所の裁判官の国民審査を行い、過半数の否定的な得票を得た裁判官は、失職する事も合わせて説明した。
「細かい事はこれから決めてゆくとして、だいたいの方向性は以上のようになります」
私は説明を締めくくり、ここから改めて、本格的な国造りを始めたのであった。