先祖返りの町作り(再調整版)
第222話 デンワ交換機
リスティン王国を打倒してから、1年ほどが経過した頃。
地方公務員の募集も順調に進んでおり、研修が終了したものから順次赴任してもらっている状況だ。
当初に比べると若干の余裕ができたため、次の一手として、各地方の初等学校の先生も募集を始めた。
その過程で、地方組織にも連絡が取れた方が良いという指摘により、電話網を全国に広げていった。ただ、地方には電気が通っていないため、現在は自家発電施設を設置してしのいでいる。
いずれは新たな発電所も必要になるだろう。
そこで、今後を見据え、ガイン自由都市以外では交流電源を採用する事とし、直流電流への変換回路の研究も始まった。
ここで問題になったのが、電話交換機である。
今までは、ガイン自由都市内部のみの電話網であったため、かろうじて人力での交換作業が間に合っていた。しかし、これが全国に広がりを見せるにつれ、人力での作業に遅延が生じ始めたのだ。
そこで、自動で交換作業を行う機械の開発が始められた。
この頃には、論理回路の研究が進んでおり、特定機能に限定した計算機なら作れるのではないかと思われたためだ。
つまり、ソフトウェアにあたる部分を論理回路で実現した、専用のコンピューターである。
これが実用化されたら、いずれはプログラム可能な、汎用のコンピューターも作れるのではないかと期待している。
(まあ、王国も打倒しましたし、これ以上、無理に発展させる必要もありませんか)
パソコンは無理でも、巨大なメインフレームと呼ばれる形態であれば、そのうち作れるようになるだろう。
(今後の市民達の研究に期待しましょう)
新しい国造りは激務であるため、そろそろ癒しが欲しいなと思い始めた。
「はぁ……。クリスさんとイチャコラしたい……」
心の中でだけつぶやいたつもりが、願望が強すぎて声に出ていたようだ。
それを聞いた周囲の官僚達から、クスクスと笑い声が聞こえてきた。
「最近、臨時ダイトウリョウはお疲れですから、お気持ちはものすごく良く分かるのですが、もう少し長期休暇はあきらめてください」
そのように、真面目に慰めてくれる人もいた。
「分かっています。それに、どうしても我慢できなくなったら、連絡して彼女の方から来てもらいますので」
私は思わず顔を赤らめながらそう答え、仕事に戻るのであった。