先祖返りの町作り(再調整版)
第202話 子孫の弟子
各種の研究室を立ち上げてから、瞬く間に3年の月日が流れ去った頃。
天然ゴムの研究室では、無事に試作品が作れるまでになっていた。
今は私の専用機のゴムタイヤに使われており、耐久テスト等の実地試験が繰り返されている。一般的な魔力ジドウシャを使っていないのは、私の専用機が一番過酷な使い方をするため、テストにはうってつけなのだそうだ。
またこの頃、ニーナは21歳になっていた。
幼少の頃から魔道具に強い興味を示していたため、ヨシツネと私が喜んでいろいろと教え込んでいたら、すっかり魔道具バカに育ってしまった。
「私ではなくて、むしろ大おじい様の影響ですよ?」
と、ヨシツネは釈明していた。
(私を免罪符のように使わないで欲しいです)
ニーナは高等学校を卒業したその日の内に、私の自室を訪ねてきて、直談判を始めた。
「大おじい様! 私を弟子にしてください!!」
あまりにも勢い良く頭を下げるので、私の方が若干気押されてしまい、少し再考を促してしまう。
「私は別にかまいませんが、ニーナはそれで良いのですか?
ヒデオ工房だと、どうしても身内びいきだと言われかねませんので、他の工房の方が、気兼ねなく修行ができるのではないですか?」
そうすると、ニーナはブンブンと音がしそうなほど首を振って、否定する。
「何をおっしゃるのですか、大おじい様!!
この都市、いえ、この国で最高の魔道具工房と言えば、間違いなくヒデオ工房ですよ!
外野のさえずり等、私は全く気にしませんので、この世で最高の親方の大おじい様の元で、どうか修行させてください!!」
そのあまりにも真剣で必死な様子に、私は許可を出す事にした。
「分かりました。ですが、他の弟子達と区別なく仕事を振りますので、そこだけは覚悟してくださいね」
「それこそ望む所です!」
こうして、子孫初の弟子となったニーナは、宣言通り必死に修行を重ねた。その結果、あっという間に一人前となり、誰もが認める魔道具職人となっていた。
そんなニーナが生涯の伴侶として選んだのは、同僚の魔道具職人の一人であった。
ロレインという名前で、真面目な職人として、私の信任の厚い青年だ。
二人は順調にお付き合いを続け、昨年、婚約者となっていた。
ニーナもロレインも魔道具が好き過ぎて、二人ででかけるとロクにデートもせずに、図書館や喫茶店で、ずっと魔道具談義を繰り広げていた。
そんな魔道具バカの二人は、今日、無事に結婚式を終えて正式な夫婦となっていた。