先祖返りの町作り(再調整版)
第197話 大おじい様の薫陶
それから、4年が経過した頃。
ユキムラは、たくましく成長していた。性格はお母さんのヘレナさんに似たようで、アウトドア派の活発な青年に育っていた。剣術や乗馬等、とにかく外で体を動かす事が大好きな、健康的な好青年になっていた。
剣術の腕前も確かで、かつてのエルクを彷彿とさせる、細身の体には似合わない優秀な壁役でもある。
「もし、領主にならなくても良いのであれば、私はガイン自由都市軍の一兵士となって、この都市の住民を守りたいです」
と、ユキムラは少し寂しそうに語っていた。
(方向性こそ違いますが、やはりヨシツネとユキムラは親子ですね)
私はそう思い、思わず私の野望の進捗を語り聞かせていた。
「今はまだ無理ですが、このままこの都市を発展させ続け、あと数十年もすれば、私の子孫達にも職業選択の自由が得られる国になると思います。
あなたの代では無理でしょうが、せめて、あなたの子供か孫が、好きな職業に就けるように、私に力を貸してはくれませんか?」
そう言うと、ユキムラは微笑みながら、力強く頷いてくれた。
そんなユキムラが生涯の伴侶として選んだのは、傭兵で魔術師として活躍している、リノアさんという女性だった。
どこか、かつてのルースの面影があるように感じられて、
(やはり、ユキムラもエルクの子孫なのですね)
と、私は一人納得していた。
優秀な傭兵として身を立てていただけはあり、リノアさんは男性の言う事に唯々諾々と従うだけの女性ではなく、確固とした意見を持つ立派な女性だ。
むしろ、ユキムラの方が振り回されている印象すらある。
そんな様子を見た家族達は、
「やはり、大おじい様の薫陶が行き届いているようで、うちの一族の男どもは、芯の強い女性が好みのようですね」
と、そう評されていた。
私は思い当たる節がありすぎて、ただただ苦笑するしかなかった。
そんなユキムラとリノアさんは、昨年正式に婚約者となり、本日、無事に結婚式を終えて、新たに夫婦となったのであった。