先祖返りの町作り(再調整版)
第196話 別世界の都市
それから更に、年を3つ重ねた頃。
この頃になると、鉄道網もかなり整備されていた。それに伴い、鉄の需要も激増したため、鉄鉱石の鉱山のあるイリス村にも鉄道が施設されていた。
また、原油の産地であるセネブの町にも鉄道が敷かれ、さらに原油の大量輸送が可能になっていた。
その他にも各所に駅舎が作られ、日々様々な物資を中心に輸送が始まっていた。
しかし、当初予定していたような、観光業にはあまり需要がなかった。というのも、平民の移動を厳しく制限されていたため、貴族につかまる事を恐れて、ほとんど利用されなかったのだ。
貴族達も、平民の発明品に乗り込むのはプライド的に無理だったようで、需要がなかった。
税収が多く、権力の強大な大貴族の支配地域を少し避けて、周辺の村落部に駅を建設していたのも影響したのかもしれない。
それでも、ガイン自由都市はさらなる発展を遂げていた。
様々な原材料の大量輸送が可能になったため、それらの資材を用いた開発が、盛んに行われるようになっていたのだ。
さすがに、前世の超高層ビルのようなものは作れなかったが、それでも、この国では誰も見た事がなかったような、高層建築のアパート等が次々に建設されていった。
「まるで、ガイン自由都市の内部だけ別世界だ」
と、広く平民達に言われるようになっていた。
そのため、移動を厳しく制限されているにもかかわらず、移住希望者が増加傾向になっていた。
また、原油の潤沢な輸送が可能になったため、各所への高速道路の施設も順調に進んでいた。その結果、移動が格段に安全になり、それもあって、ガイン自由都市だけが大きな発展を成し遂げていたのである。
また、鉄道網や高速道路網の充実に目を付けた領民がいたらしく、それらを利用した郵便事業も発展していったのであった。
ガイン自由都市は、一大経済圏の中心地としての発展を続けており、その巨大な経済力は、もはや貴族達にも無視できないものになっていた。
その事にあせりを感じ始めた貴族も出始めるようになり、
(このまま発展させ続ければ、いずれは貴族どもを排除して、共和国の建国も可能になるでしょう。私の野望の達成も、やっと目に見える範囲にきましたね)
と、私は一人、ほくそ笑むのであった。