先祖返りの町作り(再調整版)
第194話 デンワ
ニーナが4歳になり、かわいい盛りを迎えた頃。
デンキ式のデンタクが、無事に発表された。魔道具式のものに比べると、かなり小型である上に安価であった事から、人気商品となっていた。
ただ、まだまだトランジスタの量産体制が整っていないため、一般庶民が気軽に買えるほどの値段ではなかった。
それでも、業務用として人気を博している。
また、この頃には、電話の実証実験も始まっていた。
前世の受話器に収まるほどには、スピーカーとマイクが小型化できなかったため、大昔の電話機のように、それぞれが独立した形式になっていた。
電話の回線は、いったん全てが交換局に繋がるようになっている。
これは、電話が回線交換方式と呼ばれる形態で繋がっている事による。交換局で通話相手へ接続すると、双方が一本の回線で繋がり、電話が使えるようになるのだ。
ちなみに、インターネットのように、一本の回線を複数で共有する方式は、パケット交換方式と呼ばれる。
この電話機には、ボタンが一つだけついており、それを押すと交換局のオペレーターに繋がる。そこで通話相手を告げると、人力で回線を接続してくれる方式になっている。
まずは数か所での実験が行われた。具体的には、ダイガクの私の研究室や、ヒデオ工房の工房長室等である。
私の行き先に多く設置されているのは、何か緊急事態が発生した時等のために、容易に呼び出せるようにとの意味もあるらしい。
また、領主館には放送室が新たに設置されていた。そこから各所に接続された大音量スピーカーで、放送を行うのだ。
領民全員に何かのお知らせがある時に、利用されるようになっている。
テストでこの放送を最初に流した時には、ガイン自由都市のどこにいても声が聞こえると、一躍、領民達の注目の的になったのであった。