先祖返りの町作り(再調整版)
第187話 新たなおしどり夫婦
蒸気機関の発表の興奮が、まだ冷めやらぬ頃。
ヨシツネの結婚式が始まった。
ヨシツネには幼い頃から魔法の才能が有り、本人の意欲も高かったため、私も熱心に魔法を教えていた。
その結果、無詠唱魔法こそ使えなかったが、エストのようにかなり多彩な魔法を使いこなす、優秀な魔術師に成長していた。
もちろん、私が教えた『いべんとはんどら』の魔法も使いこなしている。
ヨシツネは魔道具にも強い興味を示しており、この分野での才能も豊富であった。
「もし、領主にならなくても良いのであれば、私は大おじい様に弟子入りして、ヒデオ工房で魔道具職人になりたかったです」
と、少し寂しそうな顔で語っていた。
(少しでも早く共和国を建国して、子孫達に職業選択の自由を与えなくては)
私は野望を推し進める事を、また強く決意していた。
どちらかというと、インドア派のヨシツネであったが、彼が生涯の伴侶として選んだのは、かなり活発なお嬢さんだった。
彼女はヘレナさんという名前で、赤毛をショートヘアにした、どこかローズさんの面影がある素敵な女性だ。
ヘレナさんは、おいしいものを食べるのが趣味だと公言しており、度々ヨシツネを連れ出して、新しい評判のレストランへと繰り出していた。
そんな二人は順調にお付き合いを続け、昨年、正式に婚約者となっていた。
積極的なヘレナさんは、人目もはばからずにヨシツネとスキンシップを図っていた。そのため、周囲には眉を顰めるものもいたが、本人達はどこ吹く風であった。
「大おじい様とクリスさんのイチャイチャに比べたら、私達などかわいいものですよ?」
そう、ヨシツネに指摘される事もあった。
父親のイサミは、
「大おじい様の悪い所まで含めて、そっくりになりましたね」
と、苦笑いを浮かべて語っていた。
私はヘレナさんをローズさんに重ねていたが、周囲はどうやらクリスさんに似ているという認識らしい。
そんなヨシツネとヘレナさんも今日、正式な夫婦となった。
ガイン自由都市に、新たなおしどり夫婦が誕生した瞬間でもあった。