先祖返りの町作り(再調整版)
第175話 魔力ジドウシャ
それから3年の時が過ぎ去った頃。
ようやく自動車が完成していた。
前もって進めていた道路交通法等の関連法や、セネブの町までの高速道路の建設工事も、合わせて完了していた。
私は当初、開発していた自動車の事を「デンキジドウシャ」と呼んでいた。
しかし、ダイガクの物理学部で電気については教えており、その呼び名もそのまま「デンキ」であった。
そのため、
「なぜデンキジドウシャなのですか?」
というツッコミを受けたため、「魔力ジドウシャ」と名称を改めていた。
スピードメーターについては、古代の魔道具のダイヤルの魔法式を応用し、単位時間当たりの車軸の回転量を求め、そこからタイヤの円周を計算して求める事で表示していた。
また、エンジンにあたるモーターの魔道具が車体後部にあるため、前世で言う所のRR車に相当している。
その結果、車体前部が短くなっており、私には少し不格好に見えていた。
しかし、そういった余計な前提知識のない、この世界の人々にとっては、別段おかしなデザインではなかった模様だ。
同時に開発した「シンゴウキ」も、順次設置作業が進んでいる。
しかし、まだまだシンゴウキに従う行動様式が浸透しておらず、2~3年ほどは試験運用期間として、周知徹底を図る予定である。
魔法で動く乗り物の登場は、大ニュースとなって国中を騒がせたが、ガイン自由都市の住民にとっては、新技術の実用化はそれほど珍しい事でもなくなっていた事もあり、レイゾウコの時ほどの大騒ぎにはなっていない。
しかし、他の領地では、それこそ国中をひっくり返すほどの大騒ぎになっている模様で、噂によると国王が欲しがっているそうだ。
しかし、私の王侯貴族嫌いは既に国中に知れ渡っており、開発者が私であるため、入手方法を模索しているらしい。
「そんなに難しく考えなくても、正規の手順で購入すればちゃんと売りますよ?」
私はそう周囲に説明していたが、平民と同列に予約するのでは、プライドが許さないらしい。
「まったく。そんなにプライドが大事なら、私に頼らず自分達で作れば良いのです。ご立派なプライドに見合うだけの、優秀な能力があれば、ですがね」
私はそう吐き捨てていた。
街中では、歩行者も含めてシンゴウキに従って移動する必要があるため、魔力ジドウシャは、まだ都市内部での運転は許可していない。
しかし、セネブの町までの高速道路はシンンゴウキのない一本道であるため、先に「とらっく」を実用化して、原油の試験輸送を開始している。
高速道路は、魔力ジドウシャ専用の道路であるため、両脇を簡単な柵で囲っており、歩行者や馬車は進入禁止になっている。
そのため、安全面をあまり考慮しなくても良いので、試運転にはちょうど良かったのだ。
前世を知る私にとっては、物足りないスピードしか出せない魔力ジドウシャであるが、それでも馬車よりはかなり速かった。
その上、一度に運べる量も増えたため、原油の輸送面での不安は払しょくされていた。
その様子を見た官僚達は、輸送革命が起きると理解したようで、高速道路網の整備計画を前倒しで実施してくれるようになった。