先祖返りの町作り(再調整版)
第144話 新たな観光名所
それからさらに1年後。
この頃には、セネブ村までの街道もかなり整備が進んでいた。しかし、馬車による輸送であるため、思っていたほどの輸送量にはならなかった。
そのため、ガイン自由都市の主要道路のごく一部にのみ、あすふぁるとの舗装がされている状態である。
そんなある日。
今日は領主の執務室で業務をこなしていると、仕事が一区切りしたカズシゲが、お茶を飲みながら雑談を始めた。
「そういえば、大おじい様は、また新たな観光名所を作ったのですね」
私はその発言に思い当たる節がなく、首をかしげながら否定する。
「観光名所ですか? そのようなものを作った覚えはないのですが……」
それを聞いたカズシゲが、少し目を見開いて確認を取る。
「え? でも、大おじい様が、あすふぁるとの道路を作ったのですよね?」
「それは作りましたが、それと観光名所がどう関係するのですか?」
ガズシゲは少し笑顔になりながら、真相を語ってくれる。
「そのあすふぁるとの道路が、観光名所になっているのですよ」
私はその指摘に、驚いて疑問を投げかける。
「ただの道を見て面白いのですか?」
「ただの道ではありませんよ。あれは、継ぎ目のない、一枚岩の道路ですよね?」
「まあ、そうとも言えるでしょうね」
カズシゲは大きく頷きながら、どこが観光資源になるのかを語ってくれる。
「ですから、これこそが伝説の古代魔法文明時代の道ではないかと、もっぱらの評判なのですよ。そこで、伝説の道をぜひとも一目見たいという平民が、多数訪れているのです」
私はその説明に、なるほどと頷いて同意した。
「今は物珍しいでしょうが、いずれは各地にあすふぁるとの道を張り巡らせたいので、そのうち見慣れたものになるでしょうね」
「大おじい様は、どこまでこの道を作るつもりなのですか?」
私は顎に手を当てて今後の展望を少し考え、それに答える。
「まずは原油の大規模な精製所を作ってからになりますが、セネブ村や各種の鉱山、そして石炭の炭鉱等にも張り巡らせたいですね。
そうすれば物流が活性化しますから、さらにこの都市は発展できるはずです」
それを聞いたカズシゲは、少しあきれ顔になりながら感想を述べる。
「大おじい様の開発は、本当に留まる所を知らないのですね。古代魔法文明の再現まで突き進むつもりですか?」
私はそれに微笑みながら、先の目標を語る。
「古代魔法文明とは違った形になるでしょうが、例えば、機械で布を織れるような、そんな機械文明を目指してみたいものですね」
「そんな夢のような世界を、私もぜひとも見てみたいです」
いずれは蒸気機関を開発して、産業革命を目指すのも良いかもしれないなと、この時初めて考えたのであった。