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先祖返りの町作り(再調整版)

第143話 ふしだらな大おじい様

 それから季節が一巡した頃。

 16歳になったフィーナとティータが、仲良く私の里へと旅行していた。

「「ここが森の隠れ里デスか……」」

 二人が独特の語尾でハモリながら感想を述べる。

 同じ語尾でずっと会話しているものだから、はたから見ていれば、どう見ても仲の良い双子の姉妹である。

 今回は比較的順調に旅が進んだため、夕食までには若干の時間があった。そのため、祭司長の小屋にて、私が外の世界での出来事を面白おかしく伝えながら会話を楽しんでいた。

 そんな私と祭司長の様子を二人は見ていたが、やがてフィーナがティータにヒソヒソと話し始めた。

「この二人、仲が良過ぎませんデスか?」

「まるで老夫婦の貫禄デスね」

「でもそれだと、クリスさんはどうなるデス?」

「はっ。もしかしてデス。」

「何か分かったデスか?」

 最初はヒソヒソ話だったので、私は聞こえないふりをしていたのだが、少しずつ声量が増していき、この辺りでヒートアップし過ぎたのか、結構な大声でティータが叫んだ。

「大おじい様は、各地に現地妻を作るふしだらな人だったデスよ!」

「それデス! 大おじい様はふしだらだったデス!」

 とんでもない言いがかりを受けた私は、思わず額に手を当て、天を仰いだ。

 私の現地妻扱いされた祭司長はどんな様子だろうと、そちらをチラリと窺ってみると、腹を抱えてカカと大笑していた。

(ああ。やっぱり私は、異性としては意識してもらえていませんね)

 私はそんな感想を抱いていた。

 悲しくなるのかと思ったが、全く動揺していない自分に気付き、少し驚いていた。

 そんな事を考えていると、ふと、クリスさんの笑顔が浮かんだ。

(次にクリスさんがやって来るのは、いつ頃でしょうかね?)

 そこまで考えを進めて、はっとなった。

(私はいつの間にか、クリスさんと会える時を楽しみに待つようになっていますね……)

 自らの心の内で、クリスさんの存在が、思っていたよりはるかに大きくなっている事に気付いた。

(私の心の内堀も、既に相当埋め立てられていますね)

 そして、これからの事に思いをはせる。

(今度こそ、時が来たら私の方からクリスさんに……)

 私はある事を、クリスさんに申し込む事を心に決めた。

 このようにして、私に不名誉なあだ名が増えそうな一日が、ごくごく平和裏に過ぎていった。