先祖返りの町作り(再調整版)
第122話 すとっぷうぉっち
そして私は、まずは秒の単位を決定するための作業を開始した。
最初にやったのは、領主館の庭に日時計を作った事である。2週間ほどかけて、正確な南中の方角を割り出した。
その次に行ったのは、ストップウォッチの魔道具の作成である。
これは、ボタンを押してから次にボタンを押すまでの間の、空ループの回数をカウントするものである。
そうやって、日時計で南中から南中するまでのループ回数を計り、24 x 60 x 60で割り算して、1秒当たりのループ回数の平均を割り出した。
そして、1秒単位での時間を広く教えるために、時計の魔道具も作成した。
ただ、前世の時計のように、同一の軸で、長針、短針、秒針を別々に作動させる方法が分からなかったため、それぞれで一つの軸を使用する方式になった。
ちなみに、私が発明したプレートの連動方法では、ON/OFFでしか制御ができない。
そのため、まともに使用すると、60秒を表現するためには、60本もの配線が必要になる。
私は、この問題を2進数の考え方を導入する事によって回避している。
つまり、2本の配線があった場合、ONを1、OFFを0とすると、00で0秒、01で1秒、10で2秒、11で3秒と、4種類の組み合わせを表現するのである。
この方法であれば、6本の配線があれば64種類の信号が通信できるため、必要な配線の数をぐっと減らす事ができる。
そうやって作られた「トケイ」の魔道具の見方を広めるため、初等学校でのカリキュラムにその見方を追加する事にした。
また、これは余談になるのではあるが、「すとっぷうぉっち」の魔道具が作成できた事により、細かい時間が計測できるようになった。
それを利用して、魔道具の作動時間を確認した結果、魔法式のプレートの魔法文字が小さくなるほどに、処理速度が上がる事が判明した。
この性質は前世の半導体の集積回路と同じであるため、もしかすると、小型化する程に消費魔力も少なくなるのではないかと考えている。
そのため、いつかは正確な魔力計を作成してみたいと思っている。
話をトケイに戻すと、この魔道具により細かい時間が分かるようになったが、高価な品であるため、各家庭に普及させる事ができない。
そのため、領主館の近辺に時計塔を建設した。
そこには、大きなトケイの魔道具と鐘楼が設置されており、領民が時間を確認できるようになっている。
また、この時計塔では、午前6時から午後6時まで2時間おきに計7回、鐘を鳴らして領民に時間を知らせている。
この時計塔は領民達に親しまれるようになり、いつの間にか、ガイン自由都市の新たな観光名所としても知られるようになっていった。