先祖返りの町作り(再調整版)
第99話 島の里での生活
翌日、起床して朝食も済ませた私は、早速大豆の種まきを教える事にした。いつまでもお世話になりっぱなしは悪いので、私も畑仕事を手伝った。
次に行ったのは、ミソ作りである。
ただ、ミソの発酵のためには少し時間が必要なため、仕込んでからは、トウフ作りのための「ニガリ」を入手する事にした。
「塩を作る時に、最後に煮詰めますよね? あそこで捨てている水がニガリです」
そう指導して、トウフ作りも始めた。
ミソシルの魅力を知って欲しかった私は、コウジと一緒にミソも持ってきていた。
やがて完成したトウフと、取っておいてもらった魚のアラでミソシルを作り、周囲の人にふるまった。
「魚のアラが、こんなに美味しいスープになるのですね」
「ミソは私の領地の特産品ですから、その魅力を知ってもらえて、私もうれしいですよ」
クリスさんと、そんな会話を楽しみながら日々を暮らしていた。
また、私は島の生活のお手伝いの一つとして、クリスさんの執り行う儀式も手伝う事にした。
驚いた事に、この里での儀式の手順や祝詞は、私の里のものと同一であった。
(やはり以前は、この里と私の里の間でも交流があったのでしょうね)
私はそんな感想を抱きながら、儀式のお手伝いをしていた。
「祭司様。これ、今が旬の魚です。そのまま塩焼きにするととても美味しいですよ」
里の住人の一人が、私におすそわけをしてくれる。
私もこの里になじんだのか、いつの頃からか、私の呼び名から「森の」が省略されるようになっていた。
「いつもすいません」
「いえいえ。祭司様の狩ってこられる鳥肉を食べるのが、この里の皆のひそかな楽しみになっていますので」
そのようにして、島の里での楽しい日々は過ぎていった。