先祖返りの町作り(再調整版)
第86話 ネリアとシゲル
ルースが天へと旅立ってから、2年後。
相次いで親友を二人共失った私の心の傷も、この頃には、ようやく癒えていた。
ネリアは昨年成人していて、シゲルが少し前に成人した。二人とも優秀な成績で初等学校を卒業後、すぐに公立の高等学校の入試に合格し、そのまま、優秀な成績で卒業していた。
ネリアは、ローズさん譲りの赤髪を長く伸ばし、とても丁寧な口調の淑女に成長していた。
シゲルは、顔はエストに良く似ていたが、体つきはおじいちゃんに似たようで、細身の体に引き締まった筋肉を持つ、とてもたくましい男性に成長した。
エルクとエストが教えた剣の腕も優秀で、おじいちゃんを彷彿とさせる、とても優秀な壁役に育っていた。
二人の胸には、ひいひいおばあちゃんのペンダントがかけられていて、エストの狙い通りに、私の里への強い興味を持つようになっていた。
そして、シゲルが成人した時点で、二人は私の里への旅行の許可をエストへ願い出た。
エストは、あっさりと許可を出す。
「森の隠れ里に興味を持ってくれて、私はとてもうれしいです。よって、旅行は許可します」
しかし、条件を付ける。
「ただ、鍛えているシゲルはともかく、ネリアが10日も徒歩で旅をするのは難しいでしょうから、行商人のアルトさんにお願いして、馬車に乗せてもらいましょう」
ネリアは謝辞を述べる。
「ありがとうございます。お父様。わたくしも歩いて旅をするのは、少し難しいと思ってはおりました」
その後、アルトさんに連絡を取り、お金を払って、ネリアを乗せてもらえるように交渉した。
アルトさんは、あっさりと了承してくれた。その時の会話は、以下のようなものである。
「ネリア様が馬車に乗っていただくのは全く問題ありませんが、ヒデオ様とシゲル様は、徒歩でよろしいのですか?」
シゲルがそれに答える。
「ええ。私達まで馬車に乗ってしまうと、行商ができなくなるでしょうから」
「私としては、行商の費用の分だけお金を払っていただければ、空荷でもかまいませんよ?」
私はそれを否定する。
「私達はそれで良いかもしれませんが、行商人を待っている途中の村や私の里が、それでは困ってしまいます。ですので、徒歩でかまいません」
そんな交渉をした後日。
エストが私に相談があるからと、執務室に私を呼び出した。
「おじい様。私は、直系の子孫には、ひいおばあ様を訪ねるように義務付けたいと思っています」
「エスト。無理強いはいけませんよ」
エストは顎に手を当て、少し考えた後、こう語った。
「では、おじい様。里に帰った時に、ひいおばあ様に、私の子孫には代々魔石を作って欲しいとお願いしてはくれませんか?」
「それであれば、構いません。私も子孫には里の魅力を知って欲しいので、エストやシゲルにしたように、里の魅力を教える事にしましょう。そして、成人した時に本人が望めば、私が護衛して里まで旅行しましょう」
「ありがとうございます。おじい様。その方向でお願いします」
そんな会話をしてから、数日後。
準備の整った私達はアルトさんと合流し、私の里へと旅を始めた。