Novels

先祖返りの町作り(再調整版)

第74話 孫と再び里帰り

 メイとの密談から、1年ほど経過した頃。

 私は、エストとローズさんと共に里帰りしていた。今回も行商人の一行との旅であったが、アレスさんは既に引退していて、息子さんのアルトさんとの旅であった。

 そして今、祭司長の小屋の前で、エストが到着の挨拶を始める。

「ひいおばあ様。エストです。また来てしまいました」

「おう、エストか! よくぞ参ったのじゃ! 遠路はるばる、ご苦労じゃった……の……じゃ?」

 祭司長は喜色満面で出てくると、エストの隣にいるローズさんを見て、最後が疑問形になりながら挨拶をした。

 その、あまりにもなデジャブなシーンに、私は吹き出しそうになり、両手で口を覆って少し涙目になる。

 エストも可笑しかったのか、少し頬をピクピクさせているが、吹き出す事まではせずに、冷静にローズさんを紹介する。

「ひいおばあ様。紹介します。こちらが私の妻のローズです」

「曾祖母様。お初にお目にかかります。エスト様の妻のローズと申します。よろしくお願いいたします」

 ローズさんの紹介と挨拶を受けた祭司長は、とてもうれしそうに頷いて、新しい家族を迎え入れる。

「そうか。もうエストもそのような年なのじゃな。やはり、ヒム族は成長するのが早いのう。ローズよ、わしがおぬしのひいおばあちゃんじゃ。これから末永く、よろしくな」

 エストは続けて、自分の子供の存在も紹介する。

「実は私には既に、2人の子供もいるのです。ひいおばあ様の玄孫にあたります。

 長女がネリアで、今、5歳です。長男がシゲルで、4歳なんですよ?」

 祭司長は少し驚いた様子で語る。

「そうか、もう子供までおるのか。ついこの間、訪ねて来てくれたと思うておったのじゃが、月日の流れるのは早いのう。

 しかし、わしの玄孫か。一目で良いので、見てみたいものじゃのぅ」

 それを聞いたエストも、子供達を紹介したがる。

「私もできれば、二人を紹介したいのです。ただ、二人共まだ小さいので、ここまでの街道を旅できないのです」

 私はここで、ある提案をしてみる。

「では祭司長様。こうしませんか? 私がしばらく祭司長様の代行をしますので、その間に、ガインの町まで旅行してみてはどうでしょう?」

 祭司長は腕組みをして考え、結論を述べる。

「魅力的な提案ではあるのじゃが、わしはこの里から出た事がないからのう。何日もかけてヒム族の国に行くのはちと難しいな」

 それを聞いたエストが、また別の提案をする。

「では、ひいおばあ様。こうしませんか? 私に作っていただいたように、ひいおばあ様に二人のための魔石を作ってもらいます。

 そして、おじい様が私にしてくださったように、私とおじい様で、この里の魅力を今から教えれば、成人したら自分で訪ねて来てくれるかもしれません」

 それを聞いた祭司長が、張り切って魔石作りをする事を宣言する。

「そうか! ならば、早速魔石を作るのじゃ! 最も光り輝く魔石を作って見せようぞ」

 ここでローズさんが、反対意見を述べる。

「でも、あなた。子供達だけでは、危険ではありませんか?」

「いや、ローズ。あなたもこうして、この里まで無事に来られたではないですか。おじい様に護衛してもらえれば、安全にこの里まで旅行できると思いませんか?」

 それもそうですねと、ローズさんは頷き、納得したようだ。

 ここで私がさらに賛成意見を述べる。

「ネリアとシゲルが成人する頃には、エストも三代目領主になっているでしょうから、許可を出すのも簡単そうですね」

 家族4人で小屋に入った途端に、祭司長は魔石に魔力を込め始めた。

 頑張り過ぎて4つほど粉にしたが、私が以前に教えていた、限界ギリギリまで魔力を込める方法を覚えていたようで、その後は2つの光り輝く魔石を完成させた。