先祖返りの町作り(再調整版)
第73話 複雑な乙女心
この頃には、メイは既に20歳になっていた。
そのため、周囲の家族達からは、早く婚約者を紹介して結婚するようにと、催促されるようになっていた。
そんなある日。
メイは良く冷えたビールとワインを持って、私の自室を訪ねて来た。
「おじい様。少し相談したい事があるので、一緒に飲みませんか?」
私は微笑みながら了承する。
「ええ、喜んで。たまには、孫と一緒にお酒を飲むのも良いものですから」
しばらくは、二人とも無言でチビリ、チビリと飲んでいたが、メイはポツポツと、その複雑な心境を打ち明けてくれた。
「おじい様。私もそろそろ、ゴランと結婚しなければならないとは思っているのです。でも、どうしても決心がつかないのです」
何か大事な話があるのだろうなと思っていた私は、ただ黙って、メイの話に耳を傾ける。
「自分でも、愚かだとは思うのです。でも結婚してしまうと、お兄様を完全にあきらめてしまうように感じられてしまって、どうしても、踏み込めないのです」
私は微笑みながら、優しくメイの話に返答する。
「乙女心は複雑ですね。私は既に85年生きていますが、未だに理解できません。おそらく、後1000年生きたとしても理解できないでしょうね」
そして、メイにある提案をする。
「では、メイ。こうしませんか? 私からも、それとなくエルクとルースに、あまり結婚を急がせないようにと話をしておきますので、もうしばらくは時間が稼げると思います。
あまり長い時間は無理でしょうが、その間に、気持ちの整理をしてはどうですか?」
メイは謝辞を伝える。
「ありがとうございます。おじい様。その時間を使って、じっくりと、自分がどうしたいのかを考えてみたいと思います」
「それが良いと私も思います。人生について悩めるのは、若者の特権ですからね。メイの気持ちが定まったら、その時は、私にもその結果を教えてくださいね」
メイは少し悩みが軽くなったような様子で、語り掛ける。
「やっぱり思い切って、おじい様に相談してみて良かったですわ」
「私もうれしいですよ? 愛する孫といっしょに、のんびりとお酒を楽しめるのですから。
なので、相談したい事があれば、いつでも私の元へ来てください。秘密は厳守しますよ?」
私が少し冗談めかしてそう言うと、メイも微笑んだ。
それからしばらく、二人でお酒と雑談を楽しみ、夜が更けていった。