先祖返りの町作り(再調整版)
第70話 くーらー
それからさらに半年後。
ヒデオ工房の従業員を大幅に増員し、工房の引っ越し作業も完了したため、レイゾウコの増産体制に一定の目処が立っていた。
分解しようとしていた他の工房達の予約キャンセルもあり、この頃には、なんとか積みあがった予約もかなり処理できた。それでも、レイゾウコは噂が噂を呼び、高額商品であるにもかかわらず、次々と売れている。
そのため、我が工房の売り上げもうなぎ上りである。
生産体制に少し余裕のできた私は、さらに新しい家電製品を開発している。
次に作りたいものは決めていた。クーラーである。ものを冷やすという意味で、原理は冷蔵庫と同じであるため、
(おそらく、簡単に開発できるでしょうね)
そう考えたからである。
そして、研究を開始してみたら、やはり簡単にできた。温度調節機能で少し手こずった程度である。理想は自動温度調整機能のあるエアコンだが、さすがにそこまでは作れない。そのため、ボタン式で冷風の温度や風量を調節するように設計した。
2か月程度で開発が終わり、工房での量産が始まった。
ただ、前世の記憶にあるものと比較して、かなりな重量物になっていた。これは、レイゾウコを少し改造して、室外機と室内機が一体になっていた事も原因の一つである。
そのため、前世のように壁の中空に設置する事ができず、窓際の壁に穴をあけ、床に直置きするタイプになった。
また、レイゾウコよりも必要な魔力が増えたため、頻繁に魔石の交換も必要になっていた。
ただ、この「くーらー」の魔道具は、レイゾウコほどには厳密な断熱機能は必要ないため、私の予想では、ルツ工房であれば、コピーでほぼ同じ機能の商品が作れるはずだと考えていた。
しかし、私の謎の超技術の噂が既に業界に広く知られていたため、誰も分解して研究しようとはしなかった。
ただ、うれしい悲鳴ではあるのだが、我が工房はすぐにまた忙しくなった。
(このままでは、ウチの工房がブラック企業になってしまいます)
そのような危惧をした私は、急遽、再び職人を広く募集してさらに従業員を増やし、増産体制を整えた。
ちなみに、この頃の私は、
(メイの結婚式は、いつ頃でしょうか?)
と考えていた。
メイも19歳になっていたので、そろそろ彼氏であるゴランさんを、お婿さんとして紹介してくれるだろうなと思っていたのだ。
素直ではないメイは、ブツブツと文句を言いながら、自宅に呼びつけたゴランさんとデートに出かけていたが、私にはただの照れ隠しにしか見えなかった。
(ひ孫が増える日も近そうですね)
と思っていた。