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先祖返りの町作り(再調整版)

第65話 壮大な野望

 最優先で行っていた植林の研究も順調に進み、もう少し時間をかければ、ワシの生産のための原料の調達も、持続可能な範囲に収まるだろうというのが私の予想だ。

 また、この頃にはようやく、印刷用のインクの開発が専用の魔道具の開発と共に、ほぼ完了していた。

 この魔道具は、こねる機械を短縮してこね機とし、「コネキ」の魔道具と命名している。

 これから領民を募って、専門のインク技術者を育てる予定である。自作したコネキの魔道具を無料で提供し、インクの生産と研究をまかせる予定だ。

 そのまま、カラーインクの開発もお願いするつもりである。

 カラーインクは、すすの代わりに酸化鉄等の色のついた鉱石等を細かく砕いて混ぜ込むだけなので、私でなくても開発できるだろうと考えている。

 また、すすを生産するための炭焼き窯も用意している。

 ただ、あいまいな知識で建設したため前世と比較する事ができず、どのくらいの効率なのかは不明である。

 この窯の改良も、インク技術者に丸投げするつもりである。

 現段階ではカラー印刷はまだ無理だが、ガリ版印刷を開発すれば可能になるはずだ。

 かなり手間はかかるが、色分けしてガリ切りすれば良いはずだ。

(次はいよいよ、活版印刷技術の研究です。頑張りましょう)

 私は決意を新たにする。

 私は、活版印刷技術が確立できた時点で、現在の算数と国語の教科書を元に解説ページを増やし、参考書を編集、印刷して、一般販売する予定である。

 いずれは高等数学の参考書も印刷し、この国では貴族達が独占している知識を、広く平民に普及させるつもりだ。

 そうする事によって、強力な権力基盤を築いている現在の貴族の力の源泉を弱め、平民の力を増大させる事をねらっている。

 最初から考えていた訳ではないが、これまでのさんざんな仕打ちから、私はガイン家以外のお貴族様達が、大嫌いだ。

 前世でも、活版印刷技術の普及により知識が広く安価に提供されるようになり、それらの知識を得た市民達がだんだんと力を蓄え、やがてはフランス革命のような市民革命へと繋がり、民主主義が定着したはずである。

 ただ、民主主義が定着するほど市民に広く知識が行き渡るためには、グーテンベルクの登場から、少なくとも、数百年は必要だったはずだ。

 それでも、私の無限の寿命であれば、いつかは可能であると考えている。

 ただ、その時、エルクとルースの子孫達が大きな不利益を被らないように、私が代々教育を施し、今のような、平民との距離が極めて近い貴族家を維持する事も、既に決意している。

(この地に、いつか必ず共和国を建国して見せましょう)

 壮大な野望を密かに胸に秘め、日々、研究と領地の開発を進める。