先祖返りの町作り(再調整版)
第54話 ワシと大豆
手すき和紙の研究を始めてから、2年ほどが過ぎた頃。
私は今、手すき和紙を量産するための工場の建設現場を視察している。
手すき和紙の研究自体は、1年ほどでほぼ完了した。それから領民を募って作業手順を教え、今ではそれなりに量産できている。
私の作った新しい紙、「ワシ」は好評で、羊皮紙より安価な紙としてよく売れている。
この国の紙は非常に高価なため、ワシもなかなかの高価格で取引されており、ガイン村の税収もかなり増えた。
ただ、試験的に作った小型の道具で作っていたため、大量生産と言えるほどには作れていない。そのため、記憶にある大型の各種道具の制作を発注し、今はそのためのワシ工場を建設中だ。
開発資金が増えたため、領主のエルクと相談しながら、さらに発展させるための領地の開発を行っている。
もはや実験農場とは呼べないほど輪作の農地も広がり、大規模な「ミソ」蔵も建設中だ。
「エダマメ」も新しい食材として想像していた以上に人気が出て、ミソと含めて大豆とその関連商品もガイン村の特産品として、だんだんと認知されるようになって来ている。
また、エルクの許可のもと、開墾用の農具を無料で貸し出し、当面の生活費を保証した上で移住者を募集した結果、この村の人口もかなり増加した。
ただ、うれしい悲鳴ではあるのだが、領主館で開いている学校が子供が増えて入りきらなくなり、今は交代制で授業を行っている。
ワシ工場が完成してさらに開発資金を得たら、専用の学校を建設する事もエルクに提案する予定である。
ヒデオ工房の弟子達も、順調に下積み仕事に励んでいる。まだ一人前として工房を任せられるほどではないが、それも後2年ぐらいでできるだろうというのが、私の予想だ。
ガイン村の発展に確かな手ごたえを感じながら、私は日々、忙しくとも充実した毎日を送っている。