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先祖返りの町作り(再調整版)

第52話 分度器

 冷蔵庫開発を初めて2年が経過した頃。

 行き詰った開発をいったん棚に上げ、新たな金策を考えながら日々を過ごしていた。

 この時の私の家族の年齢は、私が71歳、エルクとルースが37歳、エストが11歳、メイが6歳である。

 メイはそろそろ、私の学校に通い始める年齢だ。

 エストは3年で終了する学校を卒業し、私がもう少し高いレベルの算数を教えている。

 私の学校で教えているのは、ある程度の桁までのひっ算を使った四則演算と、文字の読み書きである。学校の共有財産として、何冊かの本も用意している。

 エストはとても頭が良く、学校を卒業後に私が個人的にレッスンしてみた所、1年ほどで素数や最大公約数、最小公倍数等をマスターした。

「おじい様の教え方が良いからです」

 等という、とてもうれしい事をエストは言ってくれる。

(この子は天才な上に、かわいさでもこれほどですか)

 はい。私がじじバカです。

(次は小数と、円周率等を教えましょうか)

 と、私は今、分度器を作るための作業をしている。

 この国にも角度の単位はあるが、私には使いにくいのと、いずれは三角関数で弧度法を教える事を目指しているため、思い切って、一周360度の度数法を教える事にする。

 そのためのオリジナル分度器の作成だ。

 生徒達には、

「私の故郷でのオリジナル単位です」

 とでも教えれば良いだろう。

 私はまず、土魔法を使って正確な薄い円柱を作る。自慢の魔法制御力を使えば、この程度は簡単である。

 この時の円柱は、後の作業を考えて少し大きめに作るのがポイントだ。

 次に直径の長さを測定し、3.14を掛け算して円周の長さを求める。

 この長さの紐をまず用意し、長さを360で割って1度単位の目盛りを刻む。

 後は、この紐を先ほど用意した円柱にまきつけ、上辺の円周部分に1度単位の印をつける。

 円周上に付けられた印から円の中心に向かって線分を引き、360分割された円盤を作る。

 ここまでできれば、これを原盤として木工職人に発注し、半円状の180度を1度単位で測れる分度器を特注で作れば良い。

 また今後を考え、毎年一定数の特注分度器の作成も注文しておく事にする。ついでとばかりに、二種類の三角定規も発注しておく。