先祖返りの町作り(再調整版)
第51話 冷蔵庫開発
私は、領主を引退したためにできた余暇を利用して、工房で売れる新商品の開発を行っている。
もっと大量の開発資金を得るためだ。
今のままでは、発展のスピードが遅過ぎる。大量の資金さえあれば、いろいろとできる事は増える。
例えば、開墾に必要な農具等を無料で提供し、当面の生活費を保証する事で広く希望者を募る等だ。
そうやって領民を増やし、子供が増えたら本格的な学校も建設したい。
公衆衛生のためにも、大衆浴場も作りたい。幸いこの村の北側には小川が流れているため、あそこに作れば排水も簡単にできる。
目指す所は全世帯下水道完備であるが、そのためには、高等数学を教える必要がある。
先は長いが、少しずつやっていくしかない。
まずは先立つものだ。そのための商品開発。
しばらく考えて、保留していた冷蔵庫の開発を目指す。
私のオリジナル魔法で氷を作る方法では、あまりにも魔力効率が悪い上に冷やし続けるのが難しいため、却下とする。
冷蔵庫の簡単な原理は、何らかの気体をコンプレッサーを使って圧縮し、気化熱や膨張熱の原理を使って周囲から熱を吸収、冷やすというものだ。
フロンガスのような冷却に向いた化学物質は入手できないが、それでも風魔法を応用すれば圧縮だけなら簡単だ。
(とりあえず、空気の膨張熱でやってみますか)
軽い気持ちで始めた冷蔵庫開発であったが、かなりの試行錯誤と悪戦苦闘が必要だった。
ただ冷やすだけならそこまでは苦労しなかったが、冷気を冷蔵庫内部に効率良く伝え、外部の熱をなるべく通さないようにするのが、恐ろしく大変だったのだ。
大量の魔力を使って連続稼働させれば、冷蔵庫として機能しない訳ではない。
ただ、これをやってしまうと、私のご禁制の魔石がどうしても必要になる。
貴族になった私が個人的に使うのならこれもアリかもしれないが、民生用として一般販売するには躊躇するものだ。
断熱材の代わりになるものを探し、ゴムのように密閉できる素材を探す。
長い、地道な研究開発が続いた。
特にこのゴムの代用品の開発は困難を極めた。様々な樹脂を中心に集め、配合率を変更して調べる。
何とか形になった頃には、14年の歳月が流れた後だったが、これは後の話とする。