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先祖返りの町作り(再調整版)

第18話 ウチの里はチート

 翌日、私が起きた時には、既にアレンさんとアルスさんは馬車に穀物を積み込んでいた。何でも、この村の穀物を輸出してもそれほど儲からないみたいだが、馬車のスペースを空けて行商するよりはマシだそうだ。

 馬車には、昨晩寝室でちらっと見た人達がいた。護衛の傭兵の4人組だ。魔術師や弓使いはいないらしい。

「魔物の領域とされる自由国境地帯を突っ切るのに、こんなに少なくて大丈夫なのですか? 囲まれたらどうするんです?」

 と聞いたら、群れで獲物を襲うのは、どちらかというと弱い個体らしい。

 魔物の領域を突っ切るような街道では、強い個体が単体で襲ってくる事が大半だそうだ。そのため、必要な護衛は数ではなく、質だそうだ。この傭兵さん達は凄腕らしい。

 出発した翌日、ちょうどいい兎の魔物がいたので、弓の射程の半分くらいで魔法をぶっ放したら、ものすごく驚かれた。

 そもそも私の言う、弓の射程がおかしいらしい。その距離になると、矢は届くがめったに当たらないとか。

 魔法の射程についても、指摘された。

 攻撃魔法を使いこなすほどの魔術師でも、射程は槍の3倍くらいで、中距離の一撃の重いダメージディーラーだそうだ。

(ウチの里は魔法だけでなく、弓もチートだったんですね……)

 生活魔法が使えるだけでは、一般的には、魔術師とは言わないそうだ。

「村長の孫は、へき地で本物の魔術師を見た事がないから、自称しているだけだろう」

 傭兵さんの一人に、説明してもらった。

 生活魔法というのは、火種を出したり、水を出したりと、生活をちょっと便利にする魔法の総称らしい。

 そのレベルの魔法式は広く知られていて、平民同士で無料で教えあっているようだ。

 魔法文字の発音さえできたら無料で魔法が使えるため、一定の年齢を超えると、ほぼ全員がチャレンジする。町では、10人に1人くらいの割合で生活魔法が使える。

 攻撃魔法を教わるには、魔術師に金を払って魔法式を伝授してもらう。この時、魔法制御の訓練方法も伝授される。

 この時の料金は有用な魔法式になるほど高額で、大事な飯のタネのため、秘匿されるそうだ。

(ちょっと待ってください。それ、昨日教えて欲しかったです)

 土壁の魔法は初級で防御魔法だから、無料で教えても良いかもしれない。

 だが、魔法制御の訓練方法を無料で教えたのはヤバそうだ。業界の価格破壊が起こらなければ良いが。

(常識の違いを埋めるのは大変そうですね)

 と実感して、初めての都市への旅は終わった。