先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第247話 伝記本
それから瞬く間に、四年ほどの歳月が流れ去っていた頃。
戸籍調査も完了していたため、昨年には各地方の議会選挙が行われており、地方議員が選出されていた。
今年には、各地方の首長の選挙も予定されている。
さらに来年になると、国会議員の選挙も予定されていて、三年後のガイン自由都市の二百周年に合わせて大統領選挙も行われる予定になっている。
そして、正式な大統領が選出され次第、新国家の樹立も正式に宣言される手筈になっている。
また、この頃になると、法整備もほぼ完了しており、司法試験も既に実施済みである。並行して整備していた警察や検察組織も出来上がっていて、これで司法に関しては一区切りを迎えていた。
それらの他には、今後の発展を見据えて、各地の鉄道網や高速道路網の整備も順調な進みを見せていた。
ただ、これまでのように、建設のたびに測量を行っていたのでは効率が悪いとの指摘を受けていた。
そこで、日本の制度を参考にして国土地理院を新設していて、この国の詳細な地図の作成も始まっている。
このように、慌ただしく新しい国の形を整えていた、ある日。
仕事が一段落した休憩時間に、法務大臣のバルトさんが雑談を始めた。
「しかし、このままいきますと、臨時ダイトウリョウには新しい二つ名が増えそうですね」
「そうなのですか?」
バルトさんは力強く頷きを返し、続きを語る。
「ええ。しかし、これで何個目の二つ名になるのですかね? ええと。『耳長の悪魔』……は、カウントしないのでしたよね。『本の父』、『学問の父』、『平民の守り手』……」
私の二つ名を指折り数え始めたバルトさんに、私は慌ててストップをかける。
「ちょ、ちょっと待ってください。あなたの生まれる遥か前の私の二つ名について、どうしてそんなにも詳しいのですか?」
バルトさんはとても意外そうな顔をして、答えを教えてくれる。
「え? 臨時ダイトウリョウは、読書が趣味ですよね? 最近、巷で人気になっている、あなたの半生を綴った伝記本は、読んでおられないのですか?」
その回答に、私は思わず頭を抱えそうになりながら、正直な気持ちを伝える。
「ああ、あれですか……。自分のことを、必要以上に美化して褒めちぎっている本なんて、恥ずかしさで悶絶してしまいそうになりますので、読んでいませんよ」
それを聞いたバルトさんは、ニカッといい笑みを浮かべて、怖い話を追加してくれる。
「それはもったいないですね。ちなみに、私は臨時ダイトウリョウと直接会話できる立場ですから、それだけでもかなり羨まれていますよ? 飲み会の席ですと、臨時ダイトウリョウの日常ネタは、私の鉄板のネタになっていますから」
私のプライバシーが駄々洩れである事実に、頭痛を覚えながら休憩時間を終えた。
そして、また私たちは、新しい国造りの仕事へと戻ったのであった。