先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第245話 名字
それから、また二年ほどの月日が流れ去っていた頃。
法整備もかなり進んでいたため、司法試験を開催するための準備として、法科ダイガクが開校していた。
ちなみに、日本などで採用されている法曹一元という考え方を取り入れていて、裁判官、検察官、弁護士は同一の司法試験で採用することが決まっている。
本来であれば、各種の法律の根拠となる憲法も制定したいところだ。しかし、そこまではとても手が回らないため、イギリスのような、慣習法の憲法にするしかないかと考えている。
また、大統領が違法行為をしたときのために、特別検察官の制度も法整備していた。
国会議員の過半数の議決で、特別検察官が任命できる。その特別検察官が捜査した結果、違法行為が認められる場合は、大統領本人を起訴できる仕組みである。
そして、裁判所が違法行為を認定した時点で、大統領は失職することになる。その場合は、あらかじめ任命していた副大統領が昇進し、六十日以内に大統領選挙を行うことが義務付けられている。
これらの準備に奔走していた、ある日。
戸籍調査を行っている部署の担当者から、質問を受けていた。
「コセキなのですが、家族の単位がとても分かりにくくなっています。なにかいい案はありませんか?」
詳しく内容を聞いてみると、この国の市民たちには名字がないことが問題の根本であると気づくことができた。
これまでは、住んでいる地域を屋号として、名字の代わりにしていたようだ。つまり、ガイン村のヒデオさんのような呼び方をしていたのである。
しかし、今では市民の移動が自由になっているため、出身地で管理していたのでは分かりにくいと言われていた。
そこで、私は名字を各自で名乗るようにしてはどうかと提案してみた。
そうすると、先ほどの官僚さんが、さらに質問を重ねる。
「各自で考えるとは言っても、地方では学校教育が始まったばかりです。そのため、自分では考えられない人も多いかと思われますが」
私はそれもそうかと思い、別の案を提示する。
「それでは、各村の村長さんに決めてもらうというのはどうでしょうか?」
しかし、この意見も不評のようだ。
「人口が少ない村は、それでいけるでしょう。しかし、家の多い村や町になってくると、一人で全てを決めるのはさすがに無理かと」
そのような指摘を受けた私はしばらく考えを巡らせ、別の案を提示してみる。
「それでは、ご先祖様の名前の二人分を繋げるのはどうですか? 例えば、ガイン家に名字がなかったと仮定して、ユキムラ・ヒデオクリスとか、ヨシヒロ・ルースエルクのように名乗るのです」
この案はすんなりと採用されることになり、やがて名字の作り方の手引書も作られて、一般に配布されることになった。
こうして、この国では、全ての市民が名字を名乗るようになったのであった。