先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第220話 海運の父
新たな開発目標が決まった私は、早速、ダイガクに天然ゴムと船の研究室を開設していた。
そのように複数の研究を同時進行して大丈夫かと思うかもしれないが、優秀な研究者が十分に育ってきているため、なんら問題はない。
私自身は方向性の指示と進捗のチェックだけを行っておけば、後はキョウジュたちが頑張って進めてくれるのだ。
天然ゴムの研究室では加硫の具体的な手法を研究し、船の研究室では鋼鉄製の中型船の開発を目指すことにしていた。
「鋼鉄の船が水に浮くのですか?」
担当のキョウジュに、そのような質問を受けていた。
そこで、私は浮力についての基礎的な説明を行うことにした。
物体を水に沈めると、本来、そこにある水を押しのけることになる。そして、押しのけた水の分だけ軽くなる。
これが浮力の原理であり、アルキメデスの原理とも呼ばれる。
「つまり、重たい鋼鉄製の船であったとしても、中を空洞にして押しのける水の量を増やせば、十分に水に浮くようになるのです」
このように、私は説明をしていた。
ただ、実際に船を作るとなると、簡単に転覆しないように重心を下に持ってくるための重りが必要になってきたり、強度を確保するための骨組みが必要だったりと、いろいろと試行錯誤が予想される。
このあたりの構造に関する部分については、現在の木製の船の技術が応用できるとは言え、新しい素材で作る船にそのまま使えるとも思えないからだ。
そして、ここで、担当のキョウジュが追加の質問をしてきた。
「それで水に浮くのは分かりました。ですが、それだけ重たくなる船を、いったいどうやって動かすのですか?」
それに対し、私は簡潔に答えを述べる。
「『スクリュー』ですね」
「それはどのようなものですか?」
「水道管へ圧力を加えるために使っている水を一方向へ流す羽があります。あれを応用して、船の推力とするのです」
こうして、スクリューも含めた新しい船の開発も始まった。
これは少し先の話になる。
やがて完成した船は、私にとっては小型船に入る程度の大きさであったのだが、漁で使う小舟しか知らないこの時代の人々にとっては、十分に大型船になったらしい。
しかも、船体が鋼鉄でできていることを知ると、みんな一様に驚いていた。
さらに、それが、漕ぎ手がいない状態でスイスイと進んでいく様子を見ると、度肝を抜かれたようになっていた。
私は島の里との交易だけを考えていたのだが、やがてこれを使って港同士を繋ぐ海運業が始まるようになっていくのである。
その結果、この船を最初に利用し始めたエルベ村は、海運業の中心地として次第に発展していくことになる。
そして、私には「海運の父」という、大変名誉な二つ名が増えるのであった。