先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第216話 ディーゼルえんじん
ユキムラの結婚式から、しばらくの時が経過していた頃。
私は約束した通り、子孫たちに職業選択の自由をできるかぎり早く与えるべく、さらに平民に力を付けさせる方法を、一人、思索し続けていた。
「ここからもっと発展させるとなると、やはり、『蒸気機関』よりも優れた産業用の動力源が必要になってくるでしょうね……」
いつものように、ヒデオ工房の工房長室において、独り言を呟きながら考えをまとめていく。
「となると、やはり、『内燃機関』しかありませんね」
熱をシリンダー外部で与えて蒸気を作り、その圧力でピストンを動かすのが外燃機関である。
それに対し、内燃機関ではシリンダー内部で爆発を起こし、その圧力で上下運動を起こす方法になる。
外燃機関と比較すると、より精密な工作技術が要求されるようになるのだが、現在までの技術の蓄積を考えれば、総力を結集すれば作れるはずだ。
そして、内燃機関が実現できると、効率に優れる上に小型化も容易になって来る。
「『ガソリンエンジン』に比べると、まだ工作難易度が低いと思われる『ディーゼルエンジン』を、まずは目指すことにしましょう」
内燃機関の代表例として、車のエンジンとして有名なディーゼルエンジンとガソリンエンジンがある。
ディーゼルエンジンでは、燃料を圧縮すると自然発火する現象を利用するため、ガソリンエンジンと比較すると点火プラグが省略できるなどの利点がある。
ディーゼルエンジンは、ディーゼルという人が発見した熱力学上の原理であるディーゼルサイクルと呼ばれるものを利用している。
ちなみに、ガソリンエンジンでは、オットーが発見したオットーサイクルを利用している。
そのため、私は燃料名であるガソリンを使うのではなく、偉大な発見をした人物に敬意を払い、オットーエンジンと呼ぶべきだと、常々、思っている。
閑話休題。
ディーゼルエンジンの有用性を示すためには、やはり、列車のように具体的な応用例を作るべきだろう。そのためには、自動車が一番であると思われる。
ただ、この時に問題になってくると考えられるのが、エンジン本体の開発を除けば、トランスミッションだろう。
その他の部品については、今の魔力ジドウシャのものが、ほぼそのまま応用できると考えられる。
セルモーターに関しても、車載バッテリーとして使える蓄電池は、幸いにして既に開発済みになっているため、比較的、簡単に作れるだろう。
しかし、ギアチェンジを行うトランスミッションだけは、どうしても新規開発を行う必要がある。
とはいっても、初期モデルにおいては、それほどの性能はないと思われるので、変速ギアについては必要最低限でいいだろう。
問題になってくるのは、バックギアだ。
残念ながら、私にはトランスミッションに関する正確な構造の知識がない。そのため、かなりの試行錯誤が要求されると考えられる。
「子孫たちの重荷を少しでも軽くするために、頑張って開発するとしますか!」
私は気合を入れるために、自分の頬を両手でパンッと叩いて、研究開始の合図としたのであった。