先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第213話 有線放送
それから、また、四年ほどの歳月が流れ去った頃。
六十七歳まで頑張ってくれていたイサミが、ついに天へと旅立っていった。
今回も私を見て泣き崩れている家族を背後にしながら、微笑みながらの見送りに成功していた。
また、この頃になると、デンワも少しずつ普及を見せ始めていた。
実験段階で最初に設置していた私へのホットラインは、交換局を通さずに専用回線を使うようになっていて、いつでもボタン一つで私を呼び出せるように改造がなされていた。
ヨシツネは、少し申し訳なさそうな顔をしながら、以下の様に説明してくれていた。
「いつでも大おじい様を呼び出せるこの専用回線が、私にとっては、とてつもない安心感になっているのです」
(可愛い子孫にそこまで頼られてしまっては、嫌だとはとても言えませんね……)
私はそんな感想を抱いていた。
また、ダイガクのある研究者が、私には思いつかなかったマイクとスピーカーの使い道を発見してくれていた。
領民への一斉放送に使われている大音量スピーカーと放送局を見て、これを小型化して各個人の家にそれぞれ設置する方法を思いついたのだ。
(なるほど、有線放送のラジオというわけですか)
私はとてもいいアイデアだと思ったのだが、どうしても解決できない案件があると、開発者から相談を受けていた。
「これを使えば、各家庭に放送を届けられます。しかし、これを使ってどうやってお金を稼ぐのかが、どうしても分からないのです」
そう言って、深刻な顔をしながら、開発者の彼は話を続ける。
「各家庭から料金を徴収するにしても、それほど高額に設定するわけにはいきませんから、設備投資の金額が回収できないのです……」
私は一つ頷きを返し、解決策を伝授することにした。
「簡単ですよ。『コマーシャル』、いえ、放送の合間に宣伝を挟めばいいのです。そして、放送の時間帯などによって金額を変動させ、宣伝を申し込んだ企業からお金を回収すればいいでしょう」
これは彼にとっては新しい考え方になったようで、納得できない様子が見て取れる。
「そんなものに、巨額の資金を払う人がいるのでしょうか?」
そこで、私はある折衷案を提示してみることにする。
「では、こうしましょう。まずは、全ての放送枠をヒデオ工房で買い取ります。そこで商品の宣伝を実際に流します。目端の利くものであれば、きっと食いつくこと間違いなしですよ?」
彼もこれには納得してくれたようだ。頷きながら同意してくれる。
「分かりました。その方向でやってみます」
そこで、私は少し冗談めかして以下の様に言ってみる。
「ただ、いかなヒデオ工房でも、宣伝に巨額の費用はかけられませんので、できればお安くしてくださいね?」
そして、彼と二人で微笑み合った。
それからしばらくすると、ガイン自由都市で初となる有線放送局が開局された。
それは、たちまちにして、領民たちの話題に上がるようになっていた。
そして、ヒデオ工房と関連企業の商品が放送の合間に宣伝されていたため、それらの売り上げが激増することになったのであった。
(一般企業からのコマーシャルの申し込みも、思ったより早く実現しそうですね)
私は確かな手ごたえと共に、新たなガイン自由都市の名物となった有線放送を聞いていたのであった。