先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第211話 すぴーかーとまいく
ニーナの誕生から、しばらくの時が流れ去っていた頃。
デンキデンシ工学科の設立が一段落していたため、私は新たな研究課題として、スピーカーとマイクの基礎研究も開始していた。
とはいっても、基本的な原理以外は覚えていないため、ダイガクに丸投げする予定である。
スピーカーの原理は、電磁石と永久磁石を組み合わせ、それと接続した膜を磁力で震わせることにより空気の振動を生み出し、音を鳴らすというものになる。
マイクについては、これの逆を行うことになる。
永久磁石に繋がれた膜に音の振動を伝え、コイルの前で震わせると、電磁誘導という原理によりごく微弱な電流が発生するようになる。
この電磁誘導とは、スマートフォンのワイヤレス充電器でも使われている原理である。
電磁石のコイルの周辺の磁場を変化させると、それを打ち消す方向に磁場を発生させるように電流が流れる現象を利用している。
この時に発生した電流の波を保存したものが、レコード等になるのだ。
これらに必要になってくるのが、電流を、見かけ上、増幅させることのできるトランジスタである。
見かけ上と念を押しているのは、もし単純に電流を増やすことができてしまうと、流れている電子の量を増やすことになってしまい、物理法則を無視してしまうようになるためである。
実際には、弱い電流を用いて、より強い電源からの電流の流れを制御するのである。
この制御の動きは、良く水道の蛇口に例えられる。
つまり、弱い電流を使って蛇口を捻る量を調整し、流れる水の量の増減に繋げるのがトランジスタとなるのだ。
そして、これができるようになると、スピーカーに接続するアンプが作れるようになる。
また、マイクによる電磁誘導で発生したごく微弱な電流を増幅し、扱いやすくするようにもできるようになるのである。
スピーカーとマイクができれば、有線式の固定電話も作れるようになるだろう。
ただ、まだまだコンピューターは作れないため、交換機と呼ばれる機械を、人力で動かす必要は出てくるだろうが。
しかし、それでも、ガイン自由都市の内部での情報伝達が、飛躍的に早くなるはずだ。
夢が広がる研究が、また一つ、開始されたのであった。