先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第210話 領主の休暇事情
この頃になると、ヘレナさんが第二子を出産していた。
生まれた子供は女の子で、後にニーナと名付けられた。黒髪に青い瞳をした、玉の様に可愛らしい赤ちゃんだ。
父親のヨシツネは、娘の誕生をことのほか喜んでいた。
仲のいいヨシツネとヘレナさんであるから、すぐにでも第二子を授かるだろうと思われていたのだが、思いのほか時間がかかってしまったのは、ヨシツネがずっと忙しかったからだろう。
領主になってからのヨシツネは、いつも以下の様なことを苦笑交じりになりながら語っていた。
「領主がこれほど忙しいとは思っていませんでした。デートの時間が取れないと、愚痴る妻を宥めすかすのが大変です」
彼はストレスが溜まって来るとお酒持参で私の部屋を訪ねてくるようになり、そこでひたすら愚痴を零して発散していた。
その状態があまりよくないと感じた私は、ヨシツネに対して以下の様に提案をしていた。
「ヨシツネ、こうしませんか? 私がしばらく領主の業務を代行しますので、長期休暇を取得して、しっかりと英気を養ってください」
それからのヨシツネは、ある程度の頻度で長期休暇を取ってくれるようになり、やがて夫婦仲も修復されていったようだ。
そのかいもあってか、望まれていた第二子の懐妊に繋がったのであった。
「娘というのは、こんなにも可愛いものなのですね」
このようなことを恵比須顔になりながら語っているヨシツネは、もう完全にデレデレになっていた。
「私たちのような男親からすると、やはり、娘というのは、とてつもなく可愛いものですよね」
わたしもこのようなことを語っていたので、おそらくは同じような顔をしているのだろう。
「大おじい様、本当にありがとうございます」
「どうしたのですか? いきなり改まって」
突然、真顔になってお礼を述べ始めるヨシツネに、私は何事だろうかと思った。
「大おじい様が協力してくださったので、長期休暇が取れるようになりました。そのおかげで子宝にも恵まれまして、こうして娘とも出会うことができました」
「私もニーナに出会えてとても幸せですから、お礼を言われるほどのことはしていませんよ?」
私とヨシツネはそう言って、お互いに微笑みあった。
(領主といえども人間ですから、時には長期休暇も必要ですね。これからは、定期的に長期休暇を取るように提案してみましょう)
私はそのように、心に決めたのであった。