先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第207話 空は飛べました
ぱらしゅーとの有効利用について考えを巡らせた私であったのだが、その結論はすぐに得られることになる。
「やはり、空飛ぶ乗り物の開発でしょうね……」
具体的な開発目標もすぐに決定することができた。
「一番、構造が単純になる、『熱気球』を開発してみましょう」
研究を開始してみると、ぱらしゅーとよりもかなり順調に進めることができた。
熱気球で移動することを考えるのであれば、風を利用する方法などの関連技術も開発しなくてはならなくなるのだろうが、今回は観光利用を前提としている。
そのため、ロープで位置を固定して浮かび上がるだけになるため、一年ほど研究を続けるとなんとか形になっていた。
気球内部を温めるための熱源には、火の魔道具の改良版を使用している。
これが物理的な熱源になってくると、燃料も積み込む必要が出てくる。しかし、魔道具を利用するのであれば、魔石一つで大きな火が出せるようになるため、その分の軽量化が可能になっていた。
試験飛行を十分に繰り返し、安全性の確認を続け、いよいよ一般公開を考え始めた頃。
私は島の里へと魔力ジドウシャを走らせていた。
この世で最初に共に空を飛びたい相手は、最初から決まり切っていた。
そのため、私は愛しの人を迎えに出かけたのだ。
「ぜひとも、クリスさんに見せたい景色がありますので、ガイン自由都市まで同行していただけませんか?」
私はそのようにお願いし、二人で帰路に就いた。ちなみに、帰りの運転手は、本人たっての希望でクリスさんに任せている。
ガイン自由都市に到着したクリスさんには、まず初めにぱらしゅーとの使い方の講習をみっちりと受けてもらっていた。
「これをしませんと、万が一の時にはかなり危険になりますので」
彼女は、せっかくのデートの時間が減ると、最初は不満たらたらだったのだが、途中から私自身が講師となると、とたんに機嫌を直してくれていた。
そして、今日。ようやく二人で乗り込んで、空の旅を楽しむ。
「どうですか? クリスさん。私は他の誰でもなく、あなたと二人で、この景色を一番初めに共有したかったのです」
私が心のうちを正直に述べると、クリスさんは目を輝かせながら返答してくれる。
「ヒデオ様……。私は、いろいろな意味で感動しすぎてしまって、今にも泣 いてしまいそうです……」
感動で打ち震えている様子の彼女を見て、私は思わずそっとその肩を抱き寄せ、触れ合いながら空からの眺めをしばらく楽しんだ。
この後、熱キキュウは一般公開され、ガイン自由都市の新たな観光資源となっていた。
今では、観光の目玉として扱われている。
この熱キキュウは、安全性を確保するため、専門の訓練を受けた搭乗員が同乗する決まりになっている。
また、必ずぱらしゅーとの使い方の講習を受けた人しか乗れないという制限も決められていた。
それでも、連日の大盛況になっていた。
「経済的な波及効果も考えれば、税収もかなり増えそうですね」
官僚たちとそのような会話をしながら、私は日々の業務をこなすのであった。