先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第206話 ぱらしゅーと
それから、また二年ほどの時が過ぎ去っていた頃。
ヘレナさんは第一子となる男の子を出産していた。ヨシツネにとっても、待望の跡継ぎの誕生になる。
金の髪に青い瞳をした、元気に泣き叫ぶ活発そうな赤ちゃんである。
一族の伝統に則り、私がユキムラと命名した。源義経からの名将繋がりということで、真田幸村から名前をいただいた。
また、この頃の私は、とあるものの開発を行っていた。
これを開発してみようと思いついたのは、何気なく、イジェクト改Ⅱの魔法式を眺めていた時のことになる。
「『イジェクト改Ⅱ』に統合してしまっている『エアクッション』の魔法を分離すれば、高いところから落ちても大丈夫なのでは?」
そう、気づいたのだ。
ただ、今のままでは、落下方向に正確に魔法を展開するのが困難になるので、全身を覆うように改良する必要があるだろう。しかし、それさえ行えば、ある程度の衝撃は吸収できるようになるはずだ。
「よし。ここはいっそのこと、『パラシュート』を開発してみますかね」
蒸気機関の開発という大きな仕事が完了した私は、ここで趣味の研究を始めてみることにした。
落下の衝撃が緩和できるようになれば、パラシュートの実験もできるようになるだろう。
しかし、パラシュートは原理こそ単純なものになるのだが、実際に使うとなると、細々としたところの開発に手間取ると考えられる。
パラシュートの畳み方一つをとってみても、手順通りに正確に畳まなければ、使用時に絡まるなどしてきちんと開かなくなる危険性がある。
よって、自分で実験してみるとしたとしても、いきなり生身の体を使って飛び降りるのは危険すぎるだろう。
そのように考えた私は、まずは体重と同じくらいの重りを使っての実験を始めた。
飛び降り台のような櫓を作り、そこからパラシュートを付けた重りを何度も落下させる。
この実験を繰り返して成熟してきたと思われる頃に、自分で飛び降りるための下準備を始めた。
いくら衝撃を緩和できる魔法があるとはいえ、何もない地面に向かって落下するのでは、あまりにも危険すぎる。そこで、内部に空気を含んだエアマットレスを開発した。
エアクッションと命名しなかったのは、魔法と同じ名称になるのを避けたためである。
まずは低い位置から実験を始め、少しずつ改良を加えながら高さを増していった。
何度も高いところから飛び降り始めた私を見て、家族たちは心配してくれて、他のものは以下の様に言って訝しんだ。
「いったい、何を始めたのだろうか?」
それに対し、私は以下の様に返答していた。
「新しい技術の開発をしています」
そう説明すると、みんな以下の様に言って納得してくれていた。
「それなら、私たちに理解できなくてもしょうがない」
実験は時に失敗することもあり、打撲傷を負うこともあったのだが、おおむね順調に開発は進んだ。
そして、最近になって、ようやく「ぱらしゅーと」が完成していた。
「さて、次は、このぱらしゅーとの有効利用の方法を考えないといけませんね……」
私はそのように呟き、新たな研究課題を考え始めていた。