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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~

第175話 軍事機密保護条例

 私は必要なほう整備せいびをまとめた資料しりょうを作成すると、急いで領主館の執務室へととんぼ返りした。

 そして、領主のリョウマと条例じょうれい立案りつあん担当たんとう官僚かんりょう一緒いっしょに会議室へと入り、条例じょうれいあんの説明を行った。

 リョウマが、若干じゃっかん、引き気味ぎみになりながら、私に質問しつもんを投げかけてくる。

「大おじい様は、どんな新兵器しんへいきを作るつもりなのですか? ここまで厳格げんかく情報じょうほう統制とうせいが必要になって来るものとは、いったい……」

 私はニッコリと微笑ほほえみ、説明を行う。おねがいする立場なので、印象いんしょうは大事だ。

「えあがんよりも、かなり強力な武器ぶきになるはずです。これがあると、貴族どもをまとめてき飛ばせます。ですから、これの作り方が他領の貴族にわたってしまうと、こちらの被害ひがい甚大じんだいになるので、これらの法案ほうあんが必要なのですよ」

 私はニッコリと微笑ほほえんでいるのに、なぜかみんなふるえ上がっているように見える。

「ふ、き飛ばしてしまうのですか? 何も、そこまで無理やり軍備ぐんび増強ぞうきょうしなくても……」

 私は笑顔えがおを深めて、できるだけ丁寧ていねい説得せっとくこころみる。

「おや? まさかリョウマは、あの馬鹿ばかどもに対して、手心てごころを加えるつもりではありませんよね?」

 リョウマのひたいからあせがブワッとき上がる。こんなにニッコリ笑顔えがおでおねがいしているのに、失礼しつれい反応はんのうである。

「い、いえっ、まさか!! ただ、この新兵器しんへいき内容ないようについては、領民に説明できないですよね? で、ですから、この条例じょうれい施行しこうするためには、領民にも説明できる理由りゆうがですね……」

 私はウンウンとうなずきながら、反対はんたい理由りゆう丁寧ていねいつぶしていく。

安全あんぜん保障上ほしょうじょう理由りゆうでいいのではないでしょうか? どうせ今回のけんがなくても、これからダイガクで開発されるであろう新技術しんぎじゅつの中には、軍事ぐんじ転用てんようが可能なものもふくまれてくるはずです。それらに対しての法案ほうあんだと説明したのでは、ダメですか?」

 私は小首こくびかしげて、あくまでニッコリ笑顔えがおし、やさしくおねがいをり返す。

 まあ、背後はいごから怨念おんねんめいたオーラが出ているのかもしれないが、そんなものは気のせいである。

 リョウマがヒッといきをのむ音が聞こえたような気がするが、これも気のせいにちがいない。

 結局けっきょく、リョウマがおびえて……、いや、失礼しつれい納得なっとくしてくれて、官僚かんりょう指示しじを出してこの条例じょうれい制定せいていする作業さぎょうに入ったのであった。