先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第162話 七代目の子孫たち
それから、季節が二巡した頃。
フィーナとティータが相次いで出産していた。こんなところでも仲のいい二人である。
まだ二人のお腹がそれほど目立たない頃から、生まれる子供たちに私が名付けて欲しいとお願いされていた。
今回は、比較的、時間に余裕があったため、じっくりと名前を考えることができていた。
ただ、男女のどちらが生まれてくるのかが分からないため、四パターンの名前を考えなくてはならなかった。
二人の出産は少し時間がかかったのだが、おおむね安産でどちらも生まれてくれた。生まれた子供はどちらも男の子で、黒髪と緑の瞳の元気な赤ちゃんたちである。
母親たちと同様に、双子と言ってもいいぐらいによく似ている。
(フィーナとティータがそっくりですし、リョウマとクラウスさんもどこか似ていますから、当然なのかもしれませんね)
私はそんな感想を抱いていた。
事前に考えていた名前の候補の中から、両方が男の子のパターンを採用し、リョウマとティータの息子をイサミと名付け、クラウスさんとフィーナの息子をトシゾウと名付けた。
六代目が坂本龍馬から命名しているため、幕末繋がりということで、近藤勇と土方歳三から名前を拝借した。
「その昔、後の世に語り継がれるほどの最精鋭部隊がありまして、その部隊名を『新選組』と言ったのですが、その局長と副長の名前をいただきました」
名前の由来を尋ねられた私は、特に隠すこともないかと、正直に打ち明けていた。
ただ、どちらも非業の死を遂げている事実は、墓まで持っていく秘密にすることが、既に決定している。
二組の夫婦の四人はとても喜んでくれていたので、私は胸をなでおろしていた。
初代の私から数えてもう七代目となる子孫の誕生に、あらためて百年という時の流れを実感していた。
しかし、どんなに時が流れても、私は年を取ることができない。そのため、この子たちもいずれは私を置いて旅立ってしまう。
そのことに思い至ると、とてつもなく寂しくなってしまい、私は早くクリスさんに会いたいなと、心の底から思うようになっていた。
(いっそのこと、新たな子孫たちの誕生を土産話にして、私の方から彼女に会いに行きましょうかね)
それはとてもいいアイデアに思えたため、私はいそいそと、旅行の準備を始めていた。
なんだか、無性に人肌が恋しい。
早くクリスさんに合って、たまには、私の方からスキンシップを求めてみるのもいいのかもしれないなと考えていた。
(ああ……。もう、すっかり、篭絡されてしまっていますね。あなたの勝ちですよ、クリスさん。もう少し待っていただけたら、あなたの完全勝利になります)
私は若干の苦笑を浮かべながら、すっかり愛しの人となった彼女との再会を急ぐのであった。