先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第136話 三角カンスウ表
私が大学設立までの下準備として次に行ったのが、三角関数表の作成である。つまり、サイン、コサイン、タンジェントで用いる値の表になる。
これができれば測量のための基礎数学として使えるため、いずれは目標としている上下水道が施設できるようになるだろう。
可能であれば常用対数表なども用意したいのだが、残念ながら計算式を覚えていない。
前世の大学の一般教養として勉強するマクローリン展開と呼ばれる公式が判明すれば、対数や三角関数などの値を四則演算だけで求められるようになる。
そのため、マクローリン展開の公式を自力で発見してもらうためにも、早く研究室を立ち上げたいと考えている。
ただ、三角関数表そのものについては、とても単純な手順を用いても求めることができる。
できるだけ正確に、大きな直角三角形を作図して、何度も計測して平均を割り出すだけである。
しかも、四十五度までの表さえ用意できれば、残りは三角関数の各種公式から求めることができるのである。
そのように考え、地道な作業を継続し、三角関数表を作成した。
気が付けば、最初に大学の設立を決意してから、これらの下準備だけで三年の歳月が流れ去っていた。
私はそのまま研究職の希望者を募り、大学教授として育て上げるべく奮闘を始める。
ただ、研究をしてもらおうとすると、研究テーマが必要になってくる。
平民が科学研究をしたことがないこの国では、自分で考えろ、ではあまりにも無責任だと考えた私は、なにかいいテーマはないかと頭を悩ませることになる。