先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第134話 デンリュウ原器
秒の単位を決定した私は、次に電流の単位を定義するための作業に取り掛かった。
最初に行ったのは、重力加速度の計測である。これができると、質量と重力の関係式が利用できるようになるため、バネを使った力の値をニュートンという単位で表現できる。
鉄球を何度も自由落下させ、その秒数を、すとっぷうぉっちの魔道具を使い正確に計測し続ける。
このようにして求められた重力加速度は、地球と同じであると仮定するのであれば、長さの単位である1ベクは、やはり、1.2メートルと少しではなかろうかと推定される。
ただ、これはあくまでも予想に過ぎない。なぜならば、秒の単位がどれだけ地球とずれているかが不明なためである。
そして、その次に行ったのが、直流電流を発生させるための電気モーターの作成である。
これについては、工作難易度を考え、二極式モーターと呼ばれる最も単純な形式のものを採用した。
永久磁石を左右に配置し、その中心部に二つのコイルを作る。
そして、軸受けの部分に接触部を設け、軸が半回転したときにプラスとマイナスが入れ替わるように作る。
このようにして作成した「デンキもーたー」に回転の魔道具を接続し、簡単な発電機を作った。
後は二本の平行な銅線に電流を同じ方向に流し、引き合う力を計測すれば、電流の単位が決定できる。
アンペアの定義さえできれば、あとは扱いやすいように電気抵抗の単位であるオームを決めてしまうことにより、電圧の単位であるボルトも求められる。
このようにして、電気の単位を次々に決定していった。
これは少し先の話になる。
私がここで作成したデンキもーたーを使ったハツデンキは、やがて物理で電気を扱う際の基準となる。
そして、ここで開発した簡単なハツデンキはデンリュウ原器と呼ばれるようになり、ずっと大切に保管されるようになるのである。