先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第115話 電卓の再開発
新価格での魔道具の販売が始まった頃と時期を前後して、ネリアが産気づいた。
ただ、今回はとても安産だったようで、思っていたよりも短い時間で出産が終わっていた。
生まれた子供は女の子で、後にレアと名付けられた。
レオンさん譲りの黒髪と、ネリア譲りの茶色い瞳をした、元気よく泣くとても可愛らしい赤ちゃんだ。
この部分だけを見るとまるで日本人の様にも感じるのだが、肌の色はお母さんに似たようで、とても色白な美人さんだ。
「この子も将来、結婚する頃になると多数の男性を泣かせてしまうに違いありませんね」
私はもはやひいひいジジバカを隠そうともせずに、そんな発言を繰り返して周囲に生暖かい笑顔を向けられ続けていた。
それからしばらくの間は、ネリアの家を度々訪ねてレアの世話をさせてもらい、とても幸せな時間を過ごしていた。
ちなみに、まだまだ封建的な意識が残るこの国ではあるのだが、私が積極的に子育てに参加しているのを見ていたためなのか、我が家の一族は父親も子育てに参加するのが当たり前の価値観になっている。
そして、それからの私は、合金の研究が終わったことによる余暇を利用して、また新しい魔道具の研究を開始していた。
次に作りたいものは決めていた。かつてコストの面で開発を断念していた、電卓の再開発である。
合金の配線の完成によりかなりのコストカットが実現できたので、今なら作れるのではないかと考えたためだ。
ただ、かつての設計のまま配線だけを変更した場合、かなり巨大なものになってしまう上に、まだ巨額の資金が必要になると考えらえる。
だが、そのための改良案も、実はずっと以前から温めていた。
がすこんろを開発した時に判明したことになるのだが、魔道具形式の魔法式でもある程度の魔力制御力はあるようで、いくらかは位置をずらして魔法が発動できる。
これを応用して、光の魔道具の発光部分をできる限り小型化し、位置をずらすようにして発動させると、LED替わりの発光部品をいくつかひとまとめにすることができる。
そうすると、必要な魔法式のプレートや配線がぐっと少なくなると予想されるため、合金の配線と併せて使用すれば、過去にルツ親方に指摘されたような、試作品だけで国家プロジェクト級の資金が必要になることはないはずだ。
そのように考えを進めた私は、光の魔道具の小型化と魔法の発動位置を効率的にずらすための研究を地道に続けていき、日々が過ぎていった。