先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第107話 島の里での生活
明けて翌日。
起床していつものようにクリスさんと一緒の朝食も済ませた私は、早速ダイズの種まきを教えることにした。
いつまでもお世話になりっぱなしになるわけにもいかないので、私も積極的に畑仕事を手伝った。
その次に行ったのが、ミソ作りである。
ただ、ミソの発酵のためには少し時間が必要になってくるため、仕込んでからは、トウフ作りのニガリを入手することにした。
「塩を作る時に最後に煮詰めますよね? あそこで捨てている水がニガリになります」
そのように指導して、トウフ作りも始めた。
ミソシルの魅力を知って欲しかった私は、コウジと一緒にいくばくかのミソも持ってきていた。
やがて完成したばかりのトウフを使い、取っておいてもらった魚のアラであら汁を作り、ミソシルの一種として周囲の人にふるまってみた。
「魚のアラが、こんなに美味しいスープになるのですね」
「ミソは私の領地の特産品ですから、その魅力を知ってもらえて私も嬉しいですよ?」
クリスさんとそんな会話を楽しみながら日々を暮らしていた。
また、私は島の生活のお手伝いの一環として、クリスさんの執り行う儀式の補助も行うようになった。
驚いたことに、この里での儀式の手順や祝詞は、私の里と同一のものであった。
(やはり、以前は、この里と私の里でも交流があったのでしょうね)
私はそんな感想を抱きながら、儀式のお手伝いをしていた。
「祭司様。これ、今が旬の魚です。そのまま塩焼きにするととても美味しいですよ?」
里の住人の一人の男性が、私におすそ分けをしてくれる。
私もこの里に馴染んだのか、いつの頃からか、私の呼び名から「森の」が省略されるようになっていた。
「いつもすいません」
「いえいえ。祭司様の狩ってこられる鳥肉を食べるのが、この里のみんなの密かな楽しみになっていますので」
そのようにして、島の里での楽しい日々は過ぎていった。