先祖返りの町作り
第198話 ディーゼルえんじん
ユキムラの結婚式から、しばらくが経過した頃。
私は約束した通り、
子孫達に職業選択の自由を与えるべく、
さらに平民に力を付けさせる方法を、
一人思索していた。
「ここからもっと発展させるとなると、
やはり『蒸気機関』より優れた、
産業用の動力源が必要ですね」
いつものように、ヒデオ工房の工房長室で、
独り言をつぶやきながら考えをまとめていく。
「となると、
やはり『内燃機関』しかありませんね」
熱をシリンダー外部で与えて蒸気を作り、
その圧力でピストンを動かすのが外燃機関だ。
それに対し、
内燃機関はシリンダー内部で爆発を起こし、
その圧力で上下運動を起こす方法だ。
外燃機関に比較すると、
より精密な工作技術が要求されるが、
現在までの技術レベルを考えれば、
総力を結集すれば作れるはずだ。
内燃機関は、
効率に優れる上に小型化も容易になる。
「『ガソリンエンジン』に比べると、
まだ工作難易度が低いと思われる、
『ディーゼルエンジン』を、
まずは目指しましょう」
内燃機関の代表例として、
車のエンジンとして有名な、
ディーゼルエンジンとガソリンエンジンがある。
ディーゼルエンジンでは、
燃料を圧縮すると、
自然発火する現象を利用するため、
ガソリンエンジンと比較すると、
点火プラグが省略できる等の利点がある。
ディーゼルエンジンは、
ディーゼルという人が発見した、
熱力学上の原理である、
ディーゼルサイクルと呼ばれるものを、
利用している。
ちなみにガソリンエンジンは、
オットーが発見したオットーサイクルを、
利用している。
そのため、
私は燃料名であるガソリンを使うのではなく、
偉大な発見をした人物の名前を使い、
オットーエンジンと呼ぶべきだと常々思っている。
閑話休題。
ディーゼルエンジンの有用性を示すためには、
やはり、列車のように応用例を作るべきだろう。
そのためには、自動車が一番であると思われる。
ただ、この時問題になるのは、
エンジン本体の開発を除けば、
トランスミッションである。
その他の部品は、
今の魔力ジドウシャのものを応用できる。
セルモーターに関しても、
車載バッテリーに使える蓄電池は、
幸いにして既に開発済みであるため、
比較的簡単に作れるだろう。
しかし、
ギアチェンジを行うトランスミッションだけは、
新規開発をする必要がある。
とはいっても、初期モデルでは、
それほどの性能はないと思われるので、
変速ギアについては最低限で良いだろう。
問題になるのはバックギアだ。
残念ながら、
私にはトランスミッションの正確な構造の、
知識がないため、
かなりの試行錯誤が予想される。
「子孫達の重荷を少しでも軽くするために、
頑張って開発するとしますか!」
私は気合を入れるために、
自分の頬を両手でパンッと叩いて、
研究開始の合図としたのであった。