先祖返りの町作り
第154話 古代の魔法式
それから1年ほどが経過した頃。
私は約束通り、
入手した古代の魔道具から得られた情報をまとめ、
書籍として一般販売していた。
慎重に記録を取りながら分解を進めた結果、
やはり後期古代魔法文明時代のものだった模様で、
肉眼では魔法式が読めなかった
そこでケンビキョウを使って詳細に調べた結果、
ほとんどの部分は破損が激しく、
解読不能であったが、
比較的損傷の少ない、
ダイヤル部分周辺の魔法式だけは判明していた。
これだけでも得られるものは多かった。
ダイヤルの回転位置を、
魔法式で検出する方法が判明し、
また、一本の配線で魔力の多寡を調整したり、
検出したりする方法も判明したのである。
これにより、様々な魔道具が改良できた。
まず最初に作ったのは、
魔力の多寡を判別する機能を利用した、
魔力計である。
これによって、
魔道具に使用する塗料の改良等が容易になった。
また、作成した魔力計を利用し、
詳細な魔力消費量を計測した結果、
やはり、刻み込む魔法文字を小さくするほど、
より少ない魔力で動作する事が判明した。
「魔法式のプレートを小型化するほど、
より早く、より少ない魔力で作動していますね。
これはやはり、
『半導体』の『集積回路』と同じ特性ですね」
そのため、
より小さい魔法文字を刻み込むための研究も、
開始する事を決めた。
また、この機能を利用し、
これまで多くの配線が必要だった、
魔道具の改良も行っていた。
一本の配線で、
複数の信号が処理できるようになったため、
大幅なコストカットに成功したのである。
これにより、
デンタクの魔道具とトケイの魔道具は、
ぐっと安価に提供できるようになった。
また、これらの魔道具ほどではないが、
レイゾウコやくーらーの魔道具も、
多少安価に提供できるようになっていた。
さらに、ダイヤル機能の部分の実装として、
無段階の火力調整機能を搭載した、
がすこんろの魔道具も開発していた。
同じ機能を使った、
温度調節機能を改良したくーらーの魔道具も、
同時に開発していた。
私はこれらの応用も含めて、
魔法式を一冊の本にまとめて発表した。
これらの改良は、
トッキョを申請していなかったため、
誰でも無料で利用できた事から、
私への名声がさらに上がる結果になったのである。
「これは私の功績ではありません。
平民のために使う事を条件に、
安く古代の魔道具を譲ってくださった、
冒険者のケントさんの功績です」
私を称賛する人に会うたびに、
そのような説明を繰り返す事になるのであった。