先祖返りの町作り
第109話 魔道具の父
シゲルの婚約から1年後。
特に問題もなく、シゲルの結婚式を終えた。
ただ、結婚式直後に、クレアさんは、
「私と結婚したのですから、以後は、
浮気は許しませんからね?
後、私が執務を手伝って差し上げますので、
領主となった暁には、
そのお仕事から逃げる事も許しませんよ?」
等と、シゲルにぐさぐさと、
何本も釘を刺しまくっていた。
「これだから、
結婚はしばらくしたくなかったんだよ……」
シゲルは小さくつぶやいてしまっていたが、
早速、クレアさんにひと睨みされただけで、
小さく縮こまってしまっていた。
早くも尻に敷かれているようだが、
女性が少し強いくらいの方が、
長く家庭円満でいられるという話を、
どこかで聞いていたので、
私は微笑みながら、その様子を眺めていた。
それから私は、ようやく完成した、
デンタクの魔道具の販売に向けた、
準備に奔走していた。
最初に考えていた時よりも、
かなり安価になったとはいえ、
魔道具として考えても、
非常に高額な商品になっていた。
大きさも、かなり小型化できたが、
それでも、フルタワーパソコンを、
4つ横に並べた程度の大きさにはなっていた。
また、ボタンの部分は、
押しやすいように、
少し斜めに出っ張りを作っていた。
そのため、
重量も専用の台が必要なほど、
重たくなっていた。
しかし、計算ができる魔道具の噂は、
瞬く間に広がっていった。
魔道具店で陳列されるようになった、
デンタクの前で、
計算が得意なものをつれて、
答えが本当にあっているかどうか、
何度も確認するものが現れる等、
ちょっとした混乱もあったが、
噂が噂を呼び、
生産が追い付かないほど売れに売れている。
また、このデンタクも特許を取り、
同時に発売された解説本も、
著作権登録をしていた。
この頃になると、
トッキョの意味がようやく理解できたのか、
ちらほらとトッキョの申請が増えてきていた。
私がレイゾウコ等のトッキョは取得したが、
秘伝の塗料と合金の申請はしていない事から、
本当に秘匿したいものは、
トッキョを申請しなければ良いと、
理解できた点も大きかったようだ。
そのため、それ以外のものであれば、
トッキョ登録すれば、
何もしなくてもお金が入ってくると、
だんだんと周知されるようになっていった。
トッキョ制度を推進したのが私である事や、
再現不可能と言われていた、
合金の開発に成功した事、
そして、デンタクの開発と、
その技術を一般公開した事が、
広く平民達に知られるようになり、
私は、「魔道具の父」という、
新たな二つ名をいただく事になった。
私は、一般公開すれば、
とても有用な技術になると考えていた、
合金の製法を秘匿し続けている事で、
何か非難を受けるのではないかと覚悟していたが、
これまではコピー天国であったため、
重要な情報を秘匿する事に対しては、
特に忌避感がない様子で、
誰も問題視しなかった。
それどころか、
複数の魔法式のプレートを連動させる技術を、
特に隠しもせずに公開した事が高く評価され、
大変名誉な二つ名が、
増える事になったのであった。