先祖返りの町作り
第108話 シゲルのお嫁さん
それからさらに2年後。
シゲルは26歳になっていた。
この国では、
男性は女性ほど婚期に厳しくないが、
それでも、そろそろ恋人を紹介するようにと、
家族から催促されるようになっていた。
そんなある日、紹介したい人がいるからと、
シゲルに言われた家族達は、
エストの執務室に集合していた。
そんな中、シゲルが恋人を紹介し始めた。
「私としては、
もう少し独身でも良かったのですが、
これ以上待たせるなら、
別の人を探すと言われてしまいまして、
私も観念する事にしました」
そして、部屋に入ってきた女性は、
私とエストは良く知っている人だった。
「お初にお目にかかる方も、
いらっしゃるかと思います。
私はクレアと申します。
これから、末永くよろしくお願いいたします」
クレアさんは、きれいな銀髪を肩まで伸ばした、
そばかすがチャーミングな、素敵な女性だ。
彼女は、公立の高等学校を、
首席で卒業した才女としても知られ、
官僚として順調に出世している女性だ。
「シゲルには、
こんなに素敵な恋人がいたのですね。
こんないい人を、
ずっと待たせるだなんて、
よく、愛想をつかされませんでしたね」
そう言って、エストは苦笑しながら、
二人の婚約を許可した。
また、この頃には、
ようやく準備が整ったトッキョ庁も、
活動を開始した。
このトッキョ庁は、
前世での著作権協会の機能も合わせもつ、
新しい省庁として、お披露目された。
ただ、4年の周知期間をおいてから、
トッキョ関連の条例が施行されたが、
領民達は、まだこの新しい権利の意味が、
良く理解できていない様子で、
トッキョ登録を申請するものが、
誰も現れなかった。
そのため私は、
レイゾウコとくーらーの魔道具を、
トッキョ第一号とし、
いつか公開する事を考えて書き溜めていた、
それらの解説本も、
同時に著作権第一号として、
トッキョ庁に申請を出した。
レイゾウコ等の情報を公開する事に、
弟子達はかなりの難色を示したが、
どうせヒデオ工房だけでは、
生産が間に合っていない事、
合金や塗料の製法はそのまま秘匿するため、
価格競争的に、
我が工房が有利なのは変わらない事等を説明し、
なんとか、説得に成功していた。
また、レイゾウコ等の解説本には、
複数の魔法式のプレートを、
連動させる技術についても、
詳しく解説されていた。
この本を読むまでは、
連動させている事に気付いていなかった、
魔道具職人達は、
驚きとともにその事実を受け入れ、
気前よくそれを公開した私への評価が、
うなぎ上りになっていった。