先祖返りの町作り
第102話 通称、ガインの都市
島アルクの里を再訪問してから、
1年ほどが経過した頃。
ガインの町は拡大と発展を続けていた。
今では、ガルムの都市と比較しても、
遜色ないほどの規模を誇るまでになっていた。
そのため、この町に住む住民達は、
自分たちの町を誇りを持って、
「ガインの都市」と呼ぶようになっていた。
ただ、正式には町のままであったため、
貴族達は蔑みを込めて、
「ガインの町」と呼び続けている。
そのため、官僚達の中には、
「領主様、ガインの都市を正式な都市とすべく、
国王様に申請しましょう」
と、進言するものも現れていた。
しかしエストは、
「我がガイン家は、
どうせ貴族達には嫌われています。
申請しても無駄でしょう」
と言って、取り合わなかった。
実際、ガイン家の領主は、
リスティン王国が崩壊するその時まで、
ずっと中級貴族のままであり、
貴族達は最後まで、我々の都市を、
「ガインの町」と呼び続ける事になる。
また、私はこの頃に、
例の金色の粉の存在を、
一般公開しようと考えていた。
あの粉を使った魔道具が一般的なものになれば、
平民達の魔道具技術を大きく発展させられると、
考えたためだ。
そのことを副工房長のワントに相談した所、
猛反対にあった。
「初代様。そんな事をしてしまえば、
我らヒデオ工房の売り上げが激減しやすぜ。
あなた様は、
あっしらを路頭に迷わせるつもりでやすか?」
「そんなつもりはありません」
「それに、それをしてしまいやすと、
ルツ工房の経営も危うくなりやす。
ヒデオ工房は初代様の作られたものでやすから、
ご自由になさってもいいかもしれやせんが、
大恩あるルツ工房を、
つぶすつもりでやすか?」
それを聞いた私は、
そういう事もありうるのかと、
しばらく考え込んでしまった。
「それに、初代様。
生産量の事は考えておいででやすか?」
「と、いいますと?」
「あの粉を量産できるのは、現在の所、
初代様だけでやす。
お一人で全ての需要を賄えるだけの粉を、
生産する事なんて、不可能でやしょう」
その説得を受けた私は納得し、
あの粉の存在は秘匿し続ける事にした。
ただ、何か別な方法で平民達の技術力を、
底上げできる方法はないかと、
思案するようになった。