先祖返りの町作り
第68話 完成したレイゾウコ
余暇のできた私は、再び家電開発を始めている。
ガインの町は、好景気で沸き返っており、
税収がかなり増えた。
(もう私が、無理に新しい政策を提案しなくても、
十分にこの領地はやっていけるはずです)
と判断し、趣味として、
前世の家電をこの世界で再現するための、
研究を続けている。
そして今、ヒデオ工房で弟子達と、
冷蔵庫の魔道具の改良案を相談している。
「完全に行き詰ってしまいましたね……」
私は溜息を吐きながら、弟子達に意見を求める。
「『断熱材』の素材も、
『ゴム』の素材も、
ちょっと私には、もう、
思いつくものがありません。
何か、良いアイデアはないですか?」
弟子の一人のワントが答える。
「先代様。
こだわりたいのは、
技術者として良く理解できやすがね。
アッシは、もう十分だと思いやす」
少し不思議な独特な言い回しで、
ワントは自説を述べる。
「このレイゾウコの魔道具は、
既にとても画期的でやす。
このまま販売してしまいやしょう」
このレイゾウコの魔道具は、
コンプレッサーの魔法式と、
バルブを動かすためのモーターの魔法式、
そして、冷媒を内部で循環させるための魔法式と、
3種類の魔法式のプレートを連動させた、
私の魔道具技術の粋を集めた作品である。
そのため、原価がとても高くなり、
魔道具として考えても、
とても高額な商品になっている。
また、内部に火をつけたロウソクを、
密閉する事で、冷媒として、
二酸化炭素を採用している。
(確か、フロンガスの代替品として、
二酸化炭素やアンモニアが、
使われていたはずです)
そう思い出したからだ。
ちなみに、アンモニアは最初から、
研究対象になってはいない。
抽出するために、一番簡単に手に入る原料を、
考えていただければ、ご理解いただけると思う。
私は、アレを長々と研究するつもりはない。
このレイゾウコの試作品は、
大きさの割には内容量が少なく、
製氷機能もないため、
私としてはかなり不満なのだが、
「ワントの言う事も、ごもっともですね」
とも思う。
「そうですね……。では、こうしましょう」
私は、このまま試験販売する事を、決定する。
「この一号機を、
取引のあるガルムの都市の魔道具店の中で、
一番大きな所に置いてもらって、
試験販売してみましょう」
しかし、条件を付ける。
「ただ、このレイゾウコは、とても高価ですから、
最初は一台か二台だけ、
試験販売してみましょう。
後は、その時のお客さんの反応を見てから、
増産するか判断する事とします」
ワントは太鼓判を押す。
「心配しなくても、すぐに増産する事になると、
アッシは思いやすぜ?」
それから試験販売されたレイゾウコは、
驚愕をもって受け入れられた。
いつでも冷えた飲み物が飲めると、
購入した貴族の客から、高い評価を得た。
その噂を聞きつけた、他の貴族達から、
「今すぐにでも、レイゾウコを作れ」
という注文が入り、急遽、増産が決定した。